第3にコロナ検査についての国家戦略が欠けていることだ。
3月6日、トランプ大統領は「望む国民は誰でも(コロナ)検査を受けられる」と語ったが、いまだにほとんどの国民は検査を受けられない。2月末以降、これまで約300万人が検査を受けたが、これはアメリカの人口の1%にも満たず、比率は多くの国に引けを取る。
連邦政府として検査実施の戦略が存在しない状況が続いている。戦争と同様に、対策を検討するうえでは、コロナという敵を正確なデータを基に理解することが不可欠である。症状が見られない感染者が多くいる中、どこの都市で感染が拡大しているかを正しく把握しなければ、政権そして地方自治体が的確な対策を取ることができない。検査が大幅に進まないかぎり、国民はどこが危険であるかもわからず、いつまで経っても外出自粛を継続するしかない状況が続く。
失職は想定していない業種にも拡大
現在、アメリカでは約500人に1人の規模まで感染者が拡大している。感染が集中している都市部では今や知り合いの誰かが感染あるいは入院しているという人が多い。
また外食産業や観光産業などに従事する多くの国民が失職あるいは一時帰休に陥っているが、今や経済危機では第2波が到来しており、弁護士、建築士、コンサルタントなど想定していなかった職種にまで失職は広がっている。ピュー研究所によると3月末時点ですでに3分の1の国民が本人あるいは家庭の誰かがコロナの影響で失職あるいは減給に陥っているという。
ハリケーンなどの自然災害、テロ事件などは局地的な被害であり、地域によってはまったく身近に感じない人も多かっただろうが、コロナは異なる。モーニングコンサル世論調査によると、トランプ大統領のコロナ危機対応を支持する有権者は、3月中旬時点で53%だったが、約1カ月が経過した現在、8ポイントも低下し45%になった。
「この危機で政府の重要性をわれわれは再認識した」
4月14日、オバマ前大統領は民主党大統領候補として指名獲得が確実となったジョー・バイデン候補について、支持を表明するビデオメッセージでこう語って、現政権のコロナ対策を批判した。
多数の州で死者数がピークを迎える今後数週間がトランプ大統領にとって正念場となる。時期尚早との批判がある中、4月16日、トランプ氏は経済活動再開の指針を発表した。だが、経済活動再開で最も重要な検査体制に関わる全国的な戦略を政権は打ち出しておらず、州政府任せとなっている。ここで大統領が危機の舵取りに失敗すれば、11月大統領選まで支持率を挽回できず、控えで待っているバイデン氏に国民の期待がシフトすることになる。
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