Jフロント、コロナで敷く「トロイカ体制」の成否 5月に7年ぶりトップ交代、山本長期体制に幕

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このような先行きが見通せない時期に、好本氏は新社長に就任する。会見では、「新型コロナが収束し、本格的に事業が立ち上がる時期にしっかりと方向を示したい。その時期を見極めることが直近の課題だ」と語った。2020年いっぱいを準備期間に充て、2021年度から新しい中期経営計画を始動する算段だ。

5月末に発足するJフロントの新経営体制で見逃せない点は、大丸松坂屋百貨店の新社長と兼務で執行役専務に就く現執行役常務の澤田太郎氏(60)と、執行役専務に就く取締役執行役常務で現パルコ社長の牧山浩三氏(61)が取締役執行役専務として同時に就任することだ。山本氏は「好本、澤田、牧山の3人が中心となり、グループ経営を推進してもらいたい」と強調する。

リーダー牽引型からトロイカ体制へ

Jフロントではこれまで、トップによる強いリーダーシップの下で改革が進められてきた。2007年の大丸と松坂屋HDの統合を主導し、Jフロントの初代社長となった奥田務氏は、「脱百貨店」「流通革命」を掲げ、改革路線を突き進んだ。

2013年に後を継いだ山本氏も、大学時代にバスケットボール部主将としてチームをまとめた経験を生かし、経営トップとしてもリーダーシップを発揮。奥田路線を継承しながら、保育園事業などの新規事業を立ち上げた。だが、今後はこれまでのように1人のリーダーが牽引するのではなく、「トロイカ体制」で経営を進めることになる。

Jフロントの新社長に就任する好本達也氏(左)と、好本氏を支える澤田太郎氏(中央)、牧山浩三氏(好本氏、牧山氏の撮影は今井康一。澤田氏はJフロント提供)

新体制のポイントは何か。同社をよく知るアパレル関係者は、「好本氏は百貨店の現場に精通している。一方の澤田氏は企画畑出身。バランスがとれている」と指摘する。好本氏は大丸(現・大丸松坂屋百貨店)入社後、約20年にわたり主力の大丸心斎橋店で勤務した現場のたたき上げだ。同じく大丸入社の澤田氏は販促・企画畑を中心に歩み、経営戦略の立案に長けている。

そして、もっとも注目すべき点が、「牧山氏を澤田氏と同格の取締役執行役専務に据えたこと」(前出のアパレル関係者)だ。牧山氏はJフロント子会社でファッションビルを運営するパルコ社長を2011年から務めている。

「大丸松坂屋百貨店はリーシング(テナント誘致など商業用不動産の運営)力が比較的弱い。一方のパルコは不動産事業を長年手がけている。Jフロントは牧山氏のノウハウをフル活用したいのだろう」と、このアパレル関係者は見る。

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