知的・精神障害者の知られざる「就職」の実態

2つの事例にみる保護者や教諭の切なる思い

キューピットワタナベに勤務する自閉症の男性(写真:キューピットワタナベ)

「息子が特別支援学校(高校)を卒業した後に企業に就職し、収入を得るなんて想像したことがない。意思疎通が難しく、日常生活が健常者のようにはできない。その意味で、会社や特別支援学校の教諭の方々には感謝の思いでいっぱいです」

ダイレクトメールの封入・発送を手がけるキューピットワタナベ(東京都昭島市)に1994年から正社員として勤務する重度の自閉症の男性(44歳)の父親(72歳)はそう答えた。

男性は26年間、フルタイム勤務(2016年からは週4日)で働き続ける。正社員とパート社員を合わせた同社の従業員は21人で、勤続年数は最も長い部類に入る。渡辺英憲社長は「(男性は)勤務態度がよく、作業に熱心に取り組み、従業員たちのアイドル」と話す。

親身な姿勢が、息子に伝わっている

1月10日に配信した『「知的・精神障害者」の知られざる働き方の実態』に引き続き、今回も知的障害者や精神障害者の雇用を取り上げる。特にスポットを当てるのが障害者の就職の舞台裏だ。前出の自閉症の男性は特別支援学校(高校)を卒業し、新卒としてキューピットワタナベに入社した。

父親は、息子のことを「単純作業の繰り返しのワンパターンが得意。それが崩れると、パニックになる場合がある」と語る。例えば、ダイレクトメールの封入作業をしているときに、「その作業ではなく、こちらの作業に対処してほしい」と言われると、不愉快に思い、パニックになることもあるようだ。

さらに、最も心配なのは通勤だという。自宅から会社まで電車とバスを乗りつぎ、30分~1時間をかけて通勤する。バスが渋滞に巻き込まれると、予定時間に着かないために、手を車内の壁にぶつけたりするときがあった。ある日は指が血だらけになり、帰宅した。父親はパニックになった末の自傷行為とみている。

「息子は、対人関係に非常に敏感。自分を守ってくれるか、敵対してくる人かを察する。この会社は障害者というくくりで息子を見ない。1人の人間としてできること、できないことを見極め、会社に貢献できる仕事を与え、丁寧に教え、戦力にしてくれた。その姿勢が息子に伝わっているのだと思う」

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