知的・精神障害者の知られざる「就職」の実態

2つの事例にみる保護者や教諭の切なる思い

都内の特別支援学校で30年以上、教諭を続けてきた加藤幸吉氏(57歳)は2018年に退職後、現在も同学校の非常勤として障害者の教育に関わる。

都内の特別支援学校で30年以上、教諭を続けてきた加藤幸吉氏(筆者撮影)

2010年に、特別支援学校の男子生徒(18歳)の現場実習を受けさせてもらえるように、障害者のための就労支援事業・NPO法人東京自立支援センターに依頼をした。理事長の髙森知氏が前職に勤務している時から、特に知的障害者の就労受け入れに熱心であることを心得えていた。

加藤氏は、生徒の次のような優れた点を見出していた。「性格が素直で穏やか。対人関係のトラブルがない。手先が器用」。一方で、作業スピードがやや遅く、声が小さいなど、コミュニケーションに課題があることも把握していた。

「再挑戦をさせてほしい」

東京自立支援センターに現場実習を依頼したのは、生徒の特性や性格、優れた点や課題を考慮すると、同センターで企業就労の前に、訓練を一定期間したほうがより好ましいと考えたためだ。それを生徒の母親も了承した。

実は同センターの前に、ある就労移行支援事業所に依頼し、実習を行ったが、採用には至らなかった。「作業のスピードが遅いことや意思疎通がスムーズにできないこと」を指摘された。

東京自立支援センターは実習で生徒の誠実な人柄を高く評価したが、おしぼりを包装する作業のスピードが遅いと指摘した。教諭は生徒の母親の了解のうえ、「再挑戦をさせてほしい」と髙森氏に依頼し、承諾された。

課題として作業スピードと職場でのコミュニケーション向上の2つが指摘された。これらを目標に、前者は学校の夏休み中に訓練し、後者は他の就労支援センターに現場実習を依頼し、集中訓練をした。再挑戦では東京自立支援センターが納得する分量のタオルを包装することができて、採用が決まった。

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