ついにジャンク債まで購入するFRBの危機感 フォールン・エンジェルの急増に先手打つ

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FRBとしては、このまま社債市場の混乱が続けば、デフォルト(債務不履行)が続出し、本格的な金融危機につながりかねないという危機感が高まっていた。そこで、まずは投資適格社債の買い出動に踏み切ることで市場全体の沈静化を図った。しかし、それでは市場の混乱は収まらず、最近ダブルB格に格下げされた社債まで買い取るという前例なき「禁じ手」に踏み込まざるを得なくなったのである。

今回の2.3兆ドルの資金供給策にはこのほかにも、中小企業向けに融資を行う金融機関に対する低利での資金供給策や、中堅中小企業向けローンの買い取り、地方債買い取りを通じた州・地方政府向けの流動性供給が含まれる。

社債市場は急反発したがリスクは残る

ジェローム・パウエルFRB 議長は声明で、「アメリカにおける優先事項は、感染者を治療し、感染拡大を食い止め、公衆衛生を巡る危機に対応することだ」としたうえで、「FRBの役割は、経済活動が抑制されている期間においてできるだけ多くの救済と安定を提供することであり、本日の行動は来たるべき回復を可能な限り力強いものとする一助となろう」と述べている。未曾有の危機に直面し、持てる力のすべてを費やした対策と言える。白井教授は、「FRBの思い切った対応は、日本も参考にできるのではないか」と話す。

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FRBの決断は今のところ市場でも評価され、ジャンク債市場をはじめ社債市場全般の価格上昇(利回り低下)をもたらし、株式市場の反騰持続にもつながっている。アメリカ経済の「守護神」としての存在感は十分に発揮しているといえるだろう。

とはいえ、新型コロナウイルスの問題がどこまで長期化するか定かではなく、景気後退がどこまで深刻化するかはまだ読み切れない。企業の収入が激減している状況下では、FRBによる資金繰り支援にも限界がある。FRBも相応のリスクを抱え込んでおり、将来の出口戦略は決して容易なものではないだろう。FRBにとっても長く厳しい戦いが続くことになる。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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