ハイイールド債が発する「危険信号」
――新型コロナショックが世界的な景気後退懸念と金融不安を高めています。
新規感染者数は中国、韓国で大きく減少してきたが、欧米では逆に急増し続けている。中韓から学ぶべきは「封じ込め政策」の重要性であり、欧米ともに封じ込め策を急速に厳しくしている。
ところが、封じ込め策の問題点は、とんでもなく景気を悪化させることだ。中国の2020年1~3月期の実質GDP成長率は前年同期比でマイナス5%が見込まれる。2019年まで6%程度(の成長率)だったので、劇的な落ち込みだ。
アメリカは2020年1~3月期が前期比年率でほぼ0%、4~6月期はマイナス12%成長というのが現在のわれわれの見立てだ。2020年通年ではマイナス0.9%予想だが、感染収束が7~9月期まで遅れれば、さらに悪化する。
景気悪化の中で意識されているのがクレジット(信用)リスクだ。アメリカのハイイールド債(低格付け債)のスプレッド(国債との金利差)が急拡大しており、景気後退突入の危険信号となる9%を突破する可能性が高まっている。
リーマンショック時には、ハイイールド債の平均スプレッドが10%を超えて急拡大したが、それに先行して金融機関の貸出態度が悪化した。需要急減で資金繰りに窮した企業に対して銀行が貸し渋れば、企業はデフォルト(債務不履行)するしかない。それが連鎖的なデフォルトと金融ショックにつながった。
そのため、FRBに求められるのは、金融機関が貸出態度を厳格化せず、需要急減に直面した企業に対して貸し渋りをしないようにすることだ。FRBは3月15日にゼロ金利を導入し、量的緩和政策も再開した。ただ、銀行の調達金利が0%近くに下がっても貸出態度が急に積極化するとは思えない。量的緩和は今後も拡大余地があるが、低格付け企業までお金が回るとは限らない。
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