アメリカ発「低格付け債」ショックがやってくる 景気後退入りで2兆ドル対策の効果も限定的

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ハイイールド債発行企業にはシェールオイル関連企業が多く、2016年と同様に原油価格暴落で厳しい状況にある。しかも、今回の原油安は長引く可能性が高い。

ロシアは中国との固定価格での契約も多く、比較的余裕があるが、サウジアラビアは財政収支均衡の採算レートが1バレル80ドル程度。アメリカのシェール業界の採算は50ドル程度で、いずれも厳しい。市場では協調減産決裂は「シェール潰し」という見方が多いが、サウジが仕掛けたのはむしろ「イラン潰し」かもしれない。

イランはアメリカの経済制裁とコロナの影響でボロボロの状態だ。財政均衡レートは200ドル近い。2月の総選挙で強硬派が勝利し、2021年には大統領選挙もある。だからこそサウジが圧力をかけた可能性がある。

シェール業界の苦境が続きそうだが、封じ込め策によって小売りや航空業界などのリスクも高まっている。トランプ政権がボーイング支援を表明したように、こうした業界の企業を破綻させない明確な姿勢が必要だ。

投機的格付け企業が急増する

――格下げが相次ぎ、「フォールン・エンジェル」(投機的水準へ格下げされた企業)が増えることも想定されます。

景気失速を考えれば、その可能性は高い。ハイイールド債を保有しているのは投資信託とヘッジファンドが多い。これらの解約が増えれば、保有資産の売却で資産価格はさらに下落する。ファンドの閉鎖となれば、市場心理は一段と冷え込む。CLO市場のリスクにも波及していくだろう。CLOは日本の金融機関の保有も多い。

――1兆ドル超の対策案で議会がもめる可能性も指摘されます。

大規模対策の必要性で共和、民主両党が一致しても、方法論で対立する可能性はある。審議が長引けば、市場や景気に悪影響が出る。トランプ大統領も選挙がかかっており、経済の危険な現状を考えれば、最後は民主党に合わせて法案を修正して通すのではないか。

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