アメリカ発「低格付け債」ショックがやってくる 景気後退入りで2兆ドル対策の効果も限定的

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――FRBはCP(コマーシャルペーパー)の買い入れと、CPにも投資しているMMF(マネー・マーケット・ファンド)の流動性支援も開始しました。

CPは短期資金の調達手段であり償還が早い。(コロナウイルスの)封じ込め策が長引いた場合、企業の資金繰りは中長期で必要となるため、本当はより長期の社債の買い入れのほうが効く。

もちろん中央銀行にはリスクとなり、やるべきではないとの議論はある。中央銀行ができないなら財政の出番となる。

政府はまず需要創出策を

――トランプ政権は1兆ドル超の経済対策を打ち出しました。ヨーロッパ諸国も相次ぎ財政出動を表明していますが、金融市場の混乱は収まりません。

金額は十分だとしても、問題はどこまで実効性があるかだ。特に懸念されるのが、限界消費性向の問題だ。アメリカでは国民1人当たり1000ドル以上を給付する案が出ているが、現金を国民に給付しても、日本の経験で言えば平均3割ぐらいしか消費に使われない。使い道は外食や旅行などが多いが、それらはまさに封じ込めで難しくなっている。

現金給付は低所得者向けのセーフティーネットとして機能するが、需要下支え策としては思ったほど効果が出ないかもしれない。そうなると、1兆ドルでは足りなくなる。

青木大樹(あおき・だいじゅ)/2005年にアメリカ・ブラウン大学大学院で経済学博士課程単位取得。2001~2010年まで内閣府で政策企画・経済調査の分析などを担当。第1次安倍政権時に「骨太の方針」策定に携わる。2010年、UBS証券会社にエコノミストとして入社し、経済調査、外国為替を担当。2016年11月から現職(写真:UBS証券)

政府がやるべきことは効果的な需要創出策だ。公共事業といってもインフラ投資というよりは、子どもにノートパソコンを配ったり、テレワーク導入のための補助金を設けるなど、生産性を高める新しい公共事業だろう。あとは、需要の蒸発で破綻が懸念される企業に対する救済枠。低格付け債の発行企業や中小・零細企業に対する貸し付けや融資保証だ。

――アメリカのハイイールド債発行企業も公的資金で救済すべきですか。

やるべきだと思う。批判を受けやすいため、法人税全体を減税するという手もあるが、企業全体を対象にすれば効果は薄まる。

ハイイールド債の中でもエネルギー業界のリスクが高い。スプレッドは平均20%ポイント近くに達している。アメリカのハイイールド債市場は現在1.3兆ドル強の規模だが、うち15%がエネルギー業界で、比重は大きい。一方、レバレッジドローン(非投資適格企業向け融資)のCLO(ローン担保証券)市場におけるエネルギー業界のシェアは5%程度にとどまる。

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