アメリカ発「低格付け債」ショックがやってくる 景気後退入りで2兆ドル対策の効果も限定的

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――ヨーロッパはアメリカ以上に景気後退が深刻と見られています。欧州中央銀行(ECB)は総額7500億ユーロの緊急債券買い入れプログラムを導入しました。

リーマンショック時を優に超える規模の財政・金融政策を行わないと乗り越えられない状況だ。ECBの措置はリーマン時並みの規模であり、まだ足りないと見られる。しかも、イタリアやギリシャのスプレッドが急拡大しており、こうした脆弱な国の債券を十分に買い入れないと、欧州債務危機が再燃しかねない。金額だけではなく、どこに分配するかが重要だ。

コロナショックは当初、2001年の同時多発テロに近いものだった。それが今、2007~2008年型の金融ショックが意識され、ヨーロッパに至っては2011年の欧州債務危機ショックも想定されており、すべてを含んだ複合ショックに進展する可能性がある。

ただ、中国の石炭消費量は近年の6割強の水準まで戻っており、中国の経済活動は緩やかながら確実に回復している。世界を景気後退から救い出すのは中国かもしれない。ウイルス発生源とされる中国が世界を救うというのは皮肉な話ではあるが。

2021年は再びバブル相場の可能性

――日本はどのように対処すべきでしょうか。

日本は中国とアメリカの影響をそれぞれ受けるため、2四半期連続のマイナス成長は避けられないし、東京五輪が延期・中止になれば3四半期連続(のマイナス成長)もありうる。

コロナウイルスの封じ込め策によって需要が喪失されており、アメリカと同様、セーフティーネットとしての現金給付や中小企業支援に加え、働き方改革やデジタル化に寄与する新しい形の公共投資が必要だ。

――2021年の金融市場の見通しは?

金融・財政政策が危機を救うという前提で行けば、その後にはリーマンショック後の上昇を超えるバブル相場に向かっていく。最終的に行き着くところは、アメリカ国債のソブリンリスクが意識される、つまりドルという通貨の価値が信用されなくなる状況だろう。

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そこまで行けば、金融緩和してもドル不信で効かない。その状況に至るまでバブルと危機と金融緩和が繰り返されるのではないか。それがあと10年なのか、20年なのか、アメリカのイノベーションと潜在成長率の持続力次第で変わってくるだろう。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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