ついにジャンク債まで購入するFRBの危機感 フォールン・エンジェルの急増に先手打つ

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「FRBが投資適格の債券を買っただけではこうした市場の下落が止まらず、シェールオイル関連をはじめ多くの企業が新規の資金調達ができずに破綻するおそれが出ていた。本来ならば、信用リスクの高い企業に対する融資条件を緩めた投融資が増えていたので、規制できちんと対応しておくべきだった。ところが、コロナ危機が発生し、リーマンショックをはるかに超える景気後退が発生してしまった以上、ある程度のリスクを中央銀行が取って企業支援をせざるを得なくなっている」。元日本銀行政策委員会審議委員で慶應義塾大学教授の白井さゆり氏はこう指摘する。

急増していたトリプルB社債発行

FRBが特に警戒していたのが、投資適格級からジャンク級に格下げされた「フォールン・エンジェル(堕天使)」銘柄の急増だ。

例えば、格付け会社のS&Pは3月25日、コロナ危機で自動車販売急減にあえぐフォード・モーターの格付けを「トリプルBマイナス」から一段階下の「ダブルBプラス」へ引き下げた。すでにムーディーズは2019年9月に同水準へ引き下げており、ジャンク級としての評価が固まった格好となった。その結果、フォードの社債(2025年満期)の利回りは、2019年末の3%台から一時10%近くまで上昇し、社債による資金調達の道は事実上閉ざされていた。

このほか、2020年に入ってジャンク級に格下げされた企業には、食品のクラフト・ハインツや石油生産のオキシデンタル・ペトロリアム、エアラインのデルタ航空、百貨店のメイシーズなどがある。今後も急増することが必至の情勢だ。

アメリカ市場では近年、投資適格最下位であるトリプルB格の社債の発行が急増していた。歴史的な低金利環境の中、発行体企業にとって調達コストが抑制できたうえ、運用難に悩む投資家にとっても投資適格で比較的高めの利回りを得られるトリプルB格債の魅力が高まっていたためだ。高い投資需要によって、信用力以上の価格上昇(利回りは低下)も目立っていた。

ところが、そこへ新型コロナショックが襲い、発行体企業と市場を取り巻く環境が激変した。投資不適格に格下げされた社債に投資できないルールとなっている多くの投資家は、そうした社債を投げ売りせざるを得なくなり、社債価格が急落(利回りは急上昇)。もともとジャンク債(ハイイールド債)だった銘柄はもとより、社債市場全体が大混乱する状況となった。

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