当局はなぜ、理財商品の破綻を容認し始めたのか
銅の需要は、公共事業などの実消費も大きい。一方で、信用取引の材料としても使われる。実需につながらない銅在庫などは、対外輸出などに回されることもある。事実、上海の保税倉庫の在庫は、いまや公表だけで80万トン(年間需要量の約1割)以上ともいわれているが、実際にはこの数倍の在庫が滞留していると見るべきだ。
この状況は一過性のものではない。4月から6月にかけて、さらに銅価格の下落の可能性もある。理財商品で集められたカネ自体も、建設関係や鉱山開発などに投資されているので、運用成績が不調でデフォルトが発生すれば、さらなる悪循環を招く懸念がある。
さて、この理財商品の破たんリスクは、以前から指摘されてはいた。だが中国政府はついに「地方における破たんリスクは政府としては負えない」と公式に言い出した。事実、3月7日の上海超日太陽能科技の社債が中国初のデフォルト(債務不履行)になり、李札輝前工長(中国銀行の前頭取)はこれを容認。政府による救済措置がないことを明確にしたのである。なお、3月5日に債務不履行が事前に伝わり、7日金曜日のLMEの後場終了直前になって、銅の市況が暴落したのは、明らかに市場は中国の経済危機を織り込み始めたという証に他ならない。
李克強首相は3月13日の全国人民代表大会(全人代=国会)閉幕後の記者会見で、中国初の社債のデフォルトに関連し、「回避できないケースもある」と述べた。中国ではこれまで、地方当局や大手銀行などが、デフォルトを発生させないよう、救済に向けて動くのが慣例だったが、立て直しが困難な企業は救済しない方針に転じたということだ。
ここで問題になってくるのがシャドーバンキングである。
シャドーバンキングとは、中国語で「影子銀行」と呼ばれる。読者もご存じの通り、通常の銀行ではない金融機関が行う、金融仲介業務をする機関のことなどを指す。今やシャドーバンキングを通じて通常の銀行であれば融資が出来ないようなリスクの高い事業にも資金が流入している。もし、今後理財商品などの債務不履行の玉突き事故が発生、シャドーバンキングそのものが倒産すれば、影響は計り知れない。
では、今後はどうなるのか。銅を担保に使った金融取引は収縮せざるを得ない。その結果、上海などの保税倉庫の銅在庫の放出は避けられないばかりでなく、当然、中国としてこれまで増加傾向にあった銅の輸入は減少するだろう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら