約1か月前の3月7日、銅の国際相場は、7200ドル/トンレベルから一気に6500ドル/トン近辺まで急落した。実に約10%の急落であるから、市場関係者は「何が起こったのか?」と驚いた。
中国の銅の年間需要は約900万トンに膨れ上がっており、いまや世界の銅の消費量の約40%を占めている。それゆえ、世界の銅の国際市況が中国の消費によって左右されるのは当然だ。中国の銅の輸入が増加すると銅の相場は上がり、中国の銅が放出されると相場は下がる構造になっている。
銅価格は、なぜ下落したのか
中国では、ドル建てで銀行からLC(信用状)の発行を受けて資金調達をして銅を輸入している。だが、多くの場合、輸入銅の60~70%の借入額は現物銅を担保にまかなっているので銅の市況が下落すると担保割れになる。 銅取引は非鉄取引の要であり、中国にとっては金取引と同様の役割をしているのだ。
さて、通貨の金利差は、経済に多大の影響を及ぼすわけだが、これまでドルの短期金利は、常に人民元金利よりも低かった。そのため業者にとっては、この金利差で利益が発生していた。ところがここにきて、徐々にドル金利が上昇傾向にあるため、金利差も縮まってきた。
これまでは低利で調達した資金を運用して、理財商品を購入(短期的に)すればさらに高い利益が期待できる図式が続いていた。だが、銅価格の下落、元安、金利差の縮小により銅取引の旨味はなくなりつつある。従って担保割れなども手伝い、輸入した銅をすぐに売って現金化せざるを得ない。なので、いったん相場が小康状態を保ったとしても、この先は、さらに銅価格の下落が予見されるのだ。
銅需要は中国の内需が安定しているとされ、建設や鉱業がらみで中長期では右肩上がりで推移してきた。そのため、銅価格も安定していると見込まれていた。だが、ここにきて、明らかに逆の流れが出てきたのが懸念材料になっている。つまり、中国の景気減速で銅需要が急速に減少。いまや余剰の銅の売りが先行し、輸入も減少した結果、需給バランスが崩れた。その結果、銅価格が低下、LME(ロンドン非鉄市場)が暴落したというわけである。
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