NY「何もかも足りない病院」で何が起きているか 米国人記者が見た医療崩壊のリアル(下)

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「予後はとても悪い」。ある男性患者について、ローゼンバーグ医師はそう言った。患者は70代で、腎臓に損傷を負っていた。「彼はこの病気で亡くなるだろう」。

「ご家族と連絡はとったのか」とローゼンバーグ医師は尋ねた。ほかの病室でも似たような質問を投げかけていた。「これらの患者さんの誰もが緩和ケアを話し合わなければならない段階に来ている」。

iPadやスマホで家族と「面会」

患者は孤独な状態を強いられていた。病院は見舞いの受け入れを停止し、医師は患者の家族に電話で情報を伝え、処置の許可も電話で取り付けた。終末期ケアについて相談しなければならない場面も少なくなかった。

この日だけでなく、それに続く1週間全体を通して、ローゼンバーグ医師は多くの難しいやりとりを迫られた。電話で、そしてしばしば通訳を通して、延命をやめ、生命維持から苦痛軽減に軸足を移すことに同意してもらう必要があったからだ。

「ご家族の多くは、呼吸不全を起こすと患者がいかに重篤な状態になるか、予後がいかに悪くなるかを十分に理解しているわけではない」とローゼンバーグ医師は話す。「ご家族は愛する家族の顔を見たいと強く願っている」。そこで同医師のチームは、iPadやスマートフォンを使って家族と患者をつないだ。

同医師によれば、人工呼吸器の取り外しに関する州法は複雑だ。通常は患者かその代理人が明確に生命維持を拒否しない限り、医師は生命維持を開始し、それを継続するものとされている。「つまり、重篤化するずっと前の初期治療の段階でこうした相談をし、ご家族に情報を伝える必要がある」。

「50代や60代の若い患者の大部分は、このような相談が必要になるなんて想像すらしていなかったに違いない」。

その週、ニューヨークの病院では人工呼吸器が間もなく底を突き、患者の選択を迫られる事態になることが危惧されていた。ただ、ブルックリン・センターの医師らによれば、この病院では当面必要な人工呼吸器は確保できていた。ローゼンバーグ医師が心配していたのは、人工呼吸器よりもスタッフの人手不足だ。

とはいえ、ローゼンバーグ医師らは状況の悪化に備えて、どの患者の治療を優先するか、他の医療施設の集中治療医らが策定したガイドラインも確認していたという。

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