NY「何もかも足りない病院」で何が起きているか 米国人記者が見た医療崩壊のリアル(下)

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このカクテル療法は一般には安全と考えられているが、重大な副作用を引き起こすこともある。ローゼンバーグ医師の月曜シフト前夜、集中治療室に移されていた1人の男性が致命的な不整脈を起こし、電気ショックを心臓に与える蘇生処置が必要になった。この患者についてはカクテル療法を取りやめる。ローゼンバーグ医師は研修医に指示を飛ばした。

ローゼンバーグ医師によれば、ある治療法が本当に有効かどうか「医師は一般の人々が思っている以上に手探り状態にあることが多い」。コロナウイルスには新型コロナ以外にもさまざまな種類があり、一般的な風邪の原因となる。「私たちみんながかかっている」風邪だ。

「風邪を治療する薬はない。ただ時間と忍耐力で治すことになる」。しかし、「人工呼吸器につながれた状態で何日も耐えるのと、単に鼻がぐずついているだけの状態で何日も耐えるのとは大違いだ」。ローゼンバーグ医師が最も恐れているのは、この点だった。

問題が1つ解決したかと思うと、次の問題が

同医師のチームは、エボラ出血熱の治療薬として開発された実験的な抗ウイルス薬、レムデシビルも一部の患者に使い始めていた。しかし、この病院では、製造元のギリアド・サイエンシズに対し患者ごとに緊急の使用許可を求める必要があった。そのためには患者のコロナ感染が確定していなくてはならない。

「陽性は確定したのか」。ローゼンバーグ医師がある患者について尋ねると、同僚からは「まだです」との答えが返ってきた。カリフォルニアの民間ラボから検査結果が返ってくるまでに1週間ほどかかるため、患者を病院内で隔離したり、特定の治療を行ったり、退院させるのも難しい状況だった。この病院ではラボの職員が新たな機器を設置し、先週から院内のラボでの検査が可能になっていた。これで状況を大きく好転させられる。医師らは期待した。

だが問題が1つ解決したかと思うと、また別の問題が発生した。この1週間、集中治療室でローゼンバーグ医師が担当している患者の多くが生命にかかわる低血圧に襲われた。だが、その治療薬が不足する日が何日もあったのだ。また、人工呼吸器につながれる苦痛を和らげるために投与される鎮静剤が不足する日もあった。医師らは代替薬を発注した。

病院の主任薬剤師、ロバート・ディグレゴリオは木曜日、ある薬をもう少し確保しようと、午前2時過ぎまで作業にあたっていた。今後の展開をローゼンバーグ医師はこう予測した。「薬不足が最大の脅威になる」

ローゼンバーグ医師は、さまざまな患者がこの病気に倒れていることに驚かされていた。年齢、民族的なバックグラウンド、既往歴がさまざまなのだ。重篤な状態となっても、比較的若い層を中心に回復が進んで自力で呼吸できるようになる患者もいた。

しかし病室の外で立ち止まると、複数の疾患を抱えて老人ホームから搬送されてきた多くの患者が目に入った。インフルエンザ流行期に集中治療室を埋めるような患者たちだ。一部はすでに重篤化し、臓器不全を起こしていた。

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