男だらけの不動産会社で女性が飛躍する会社

高知・ファースト・コラボレーションの事例(2)

エース社員の出産引退が転機

同社が女性の活躍に本格的に乗り出したきっかけは、出産を機に退職する女性社員が3人続いたことでした。それまで「出産退職は仕方ないこと」とあきらめていた武樋社長ですが、その後さらに、すでに店長となっていたエース社員の別役和美さんが出産することになり、どうすれば彼女に復帰してもらえるかを、真剣に考えざるをえなくなったのです。

そして同社がすばらしいのは、別役さんが安心して出産・復帰できるよう、残された社員たちが自発的に「働くママさん計画」と称する復帰計画を考え、全社員にプレゼンしたことでした。

産休に入る女性は、「自分が抜けたせいでほかの人たちに仕事のしわ寄せがいく」と申し訳ない気持ちになるものです。ところがファースト・コラボレーションでは残された社員が自発的にプランを立て、別役店長不在でもお店を回し、結果を出すにはどんなふうに仕事を分担すればいいかを考えて備えたのです。これには驚きました。このような発想とアクションが起こせるのは、日頃から社員たちが強い絆で結ばれているほかありません。

実はこの産休・育休計画の作成や仕事の引き継ぎこそが、母になる女性本人と、周囲の人たちの両方を成長させてくれることは、あまり知られていません。
産休後に復帰し、現在も子育て中の同社の女性店長である別役さんは、このように語ってくれました。

「私は昔、他人に仕事を任せるのが苦手なタイプでした。だから出産で長く職場を留守にするのが怖かった。人間ってどこかコントロール欲があるし、やっぱり自分を認めてほしいから、自分がいないと困るような状況を無意識につくっているんですよね。だけどそれを思い切って手放してみたら、不思議なことにチームメンバーが想像以上に成長したのです。それ以来、意識が切り替わりました。出産前は自分がみんなに頼られるのが私のモチベーションだったけれど、今は“みんながしっかり活躍できる環境をつくるのが私の仕事だ”と思っています」

このお話にはとても納得でした。若手は仕事を任されることで成長します。休みに入る女性側も、一プレーヤーとしてではなく、マネジャーとしての働き方を身に付けるようになる。つまり産休育休をとる人がいるたびに、職場全体が自分ごとにとらえて動き、成長するということです。これは特に強調しておきたい点です。

よくあるケースが、出産後の女性は出世とは縁のないキャリアコースを進み(通称:マミートラック)、時短勤務を選ぶことが多いものです。これは普通の社員が長時間労働をするのが前提になっていることや、子育てをしながら上を目指す女性がまだ圧倒的にマイノリティであるため、母親でも管理職として活躍できるということの理解不足や環境が準備されていないことも一因でしょう。しかし事前にチーム全体で「自分ごと」として入念に計画を立てておけば、女性も企業も、余裕をもって行動することが可能です。当たり前ですが、妊娠から出産まではおよそ10カ月かかるもの。休みに入る時期を差し引いたとしても、準備できる時間は十分残されているのです。

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