造船「国内首位&2位連合」でも遠い中韓の背中 今治造船とJMUが提携、受注競争に危機感

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今治造船とJMUの提携は、日本の造船業にとって起死回生の打開策になるのか。2社合計の世界シェア12%という水準は、韓国や中国の大型統合と比べると見劣りするのは確かだ。さらなる再編が必要だとの意見は根強いが、一筋縄ではいきそうにない。

というのも、再編の際には、国内の造船所に仕事をどのように割り振るのかが問題になるからだ。今回の提携交渉でもその点の調整に一番時間がかかった。細かなルールを決めて、お互いに不満が出ないよう細心の注意を払ったという。

提携時の記者会見でも、両社の社長は規模を追わない方針を強調し、今後の再編については慎重に言及を避けた。檜垣社長は「業務提携自体が特効薬でないことはわかっている。両社の提携によってコストがめちゃくちゃに下がって、ほかの会社に勝てるということを考えているわけではない」とし、中韓との競争は厳しいとの認識を示した。

焦点となるLNG運搬船

提携した両社にとってのもう1つの焦点は、船価の高いLNG運搬船だ。今回の提携で発足する合弁会社で扱う商船からLNG船を除いた。これは、今治造船が三菱重工業と合弁での営業・設計会社をすでに始めているためだ。

しかし、三菱重工は大型船の主力工場である長崎造船所香焼工場を同じ長崎県の大島造船所に売却予定だ。売却すればLNG船から撤退することになる。檜垣社長は「三菱との合弁解消は考えていない」としているが、合弁会社の意義は薄れつつある。

そもそも、今治造船は現在LNG船の案件を持っていない。JMUも2014年に4隻受注した大型LNG船で工事遅れなどを起こし、多額の工事損失引当金を計上した経緯から、「当面LNG船の建造計画はない」(千葉社長)状態だ。

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