造船「国内首位&2位連合」でも遠い中韓の背中 今治造船とJMUが提携、受注競争に危機感

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2019年3月には世界1位の現代重工業(韓国)が3位の大宇造船海洋(韓国)を買収することで最終合意。中国でも世界2位と5位の国有企業が経営統合した。いずれも両国内で1、2位企業同士の統合で、日本だけが再編に取り残されていた。

深刻な海運業界の船余り

世界の大手造船各社が再編に動くのにはいくつかの背景がある。1つは、一括発注の増加だ。

近年、造船各社の顧客である海運業界も再編が進み、それにつれて大型商船も一度の発注が多数隻となることが増えている。規模が小さな造船会社ではそうした顧客の要求に応えられないため、造船会社の合従連衡が進んでいた。今治造船とJMUが共同で受注し、それぞれの造船所で船を建造すれば、多数隻の発注にも十分応えられる。

資本業務提携を発表した記者会見後に握手をかわす今治造船の檜垣幸人社長(右)とJMUの千葉光太郎社長(記者撮影)

もう1つの背景は、世界の海運業界で続く深刻な「船余り」だ。2008年のリーマンショック直前に受注し、生産を開始した船が大量に出回っているためだ。建造に数年かかる大型商船はリーマンショック後も建造量が増え続け、2011年の世界の建造量は年間1億総トンを超えた。その反動で建造量は大きく減少し、現在はピーク時の半分程度の5000万総トンにとどまっている。

それにつれて、各造船会社の手持ち工事も減少。適正とされる2年分の手持ち工事量を割り込むと、「新型船の設計をする余裕がなくなり、既存のものと同型船の受注しかとれない」(檜垣社長)。比較的競争力のある今治造船は2年分を確保しているというが、国土交通省によると、日本の造船業界全体は1.8年分の手持ち工事しかない。

その結果、ここ数年は赤字覚悟の安い船価での受注競争が繰り広げられてきた。中国や韓国の企業は政府からの手厚い保護もあり、少ないパイを奪いにきた。韓国の大宇造船海洋は一時経営危機に陥ったが、政府系金融機関が1兆円を超える金融支援をしているとされる。日本政府もこうした動きに対して世界貿易機関(WTO)のルールに違反するとして2国間協議を求めているが、韓国側が応じる気配はない。

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