消える内航船、静かに進む「海の物流危機」 船員の過半数が50歳超でも「外国人はノー」
多くの業界と同じく、物流の大動脈である海運業も少子高齢化と人手不足に悩まされている。深刻なのは、国内産業の基礎物資輸送の要である内航海運で事業継続が危ぶまれる事業者が増えていることだ。
海外の港を行き来する外航船と異なり、内航船は日本国内の港から港へモノや人を運ぶ海運業者だ。鉄鋼や石油製品、セメントなど国内の産業基礎物資輸送の約8割を担う。災害などで陸路が寸断された際には代替輸送を行うほか、環境負荷軽減に向けたモーダルシフトの受け入れ先としても期待されている。
内航船の船員数はバブル崩壊後の景気低迷に伴い、1990年の5万6100人から2016年には2万7639人へ半減。その一方で輸送量は2010年以降、3億6000万~3億7000万トン程度で下げ止まっており、現状の船員規模を維持する必要がある。しかし、年齢構成をみると心もとない状況だ。
船員の過半数は50歳以上
内航船員の7割強を占める貨物船の場合、50歳以上が53%、60歳以上も28%を占める。一方、30歳未満の若手船員は16%にすぎない。いびつな年齢構成になった背景には、内航船員は日本人でなければならないというルールがあるからだ。
1899年(明治32年)の船舶法制定以来、内航船は経済安全保障上の観点から日本籍船に限定され、外国人船員も認められてこなかった。一方、運賃がドル建ての外航船は、1985年のプラザ合意後の円高をきっかけにコスト削減策として外国人船員の採用に舵を切った。
内航海運は、外航海運の外国人船員化と漁獲制限に伴って漁船からあぶれた日本人船員の受け皿となった。バブル崩壊後の輸送量減少で新造船が減ったこともあり、人手不足とは無縁でいられた。「即戦力を採用できたので、長らく船員育成に力を入れてこなかった」(内航船関係者)ため、今そのツケが回ってきた格好だ。
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