グーグルに事業売った男が挑む「水道管」大問題 AIで劣化診断、シリコンバレー流が日本進出
寿命を左右するのは、水道管と土との酸化反応で腐食によるさびがどれだけ起こるかということ。AI診断のアルゴリズムは、配管素材や使用年数、過去の漏水履歴といった水道管に関する情報と、水道管の周りの土壌や気候、人口など、独自に収集した1000以上の環境変数を含む膨大なデータベースによって構築されている。例えば配管の傾斜角度もその1つ。傾斜している水道管のいちばん下にある部分は、物理的に水圧がかかりやすい。
創業からわずか4年半で全米27州で60以上の水道事業者と契約にこぎつけた。日本でも川崎市上下水道局と2019年2月から実証実験を開始し、その後神戸市水道局、埼玉県越谷市・松伏町の水道企業団が続き、この3事業者では検証が完了。アメリカでの導入先と同様の有効性が確認された。この春から実際のツールの提供が始まる予定だ。このほか神奈川県企業庁や大阪市水道局などでの検証も進められている。
“シリコンバレー精神”で地元水道局が採用
最初にビジネスが始まったのは、フラクタが本社を置くシリコンバレーに近いサンフランシスコ市とオークランド市の水道会社だった。フラクタのツールは、水道会社が一般的に保有する5種類の水道管データ(位置情報、材質、口径、設置年月、破損履歴)をアルゴリズムに取り込めば、1つひとつの水道管の劣化状態を予測できる。導入を進めるためには、水道会社から自社のデータを提供してもらわなければならない。
「日本ではなかなかデータを出してくれない。だがシリコンバレーのカルチャーが根付いているこの2都市では、面白いから一緒にやってみようと言ってもらえた。そこから次から次へと導入が決まるドミノ現象が始まった」と加藤氏は振り返る。顧客のうち約20社はカリフォルニア州だ。「担当者がハイテク好きかどうかは重要。とくにカリフォルニアは進取の精神がある」(同)。
加藤氏が水道会社に売り込む際にアピールするのは、フラクタのソフトウェアの費用対効果だ。契約は年間の定額課金が基本。例えばフラクタの試算では、サンフランシスコ市は、従来の配管の平均寿命で考える方法とフラクタの方法を比較すると、水道管の更新費用を4割ほど減らせるとの結果が出たという。
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