グーグルに事業売った男が挑む「水道管」大問題 AIで劣化診断、シリコンバレー流が日本進出
アメリカには100万マイル(160万キロメートル)の水道管があり、フラクタはすでに全配管データの10%ほどを押さえたという。「3割くらいのデータを押さえれば、誰も追いつけなくなるのではないか」と加藤氏は考えている。
一方で加藤氏は、「僕らの半分のデータのサイズでより精緻な解析モデルを作ってくる人たちが出てくるかもしれない。それでもいい。僕らが暴れることで天才たちが競争相手として入ってくれば、技術が広まる契機となり、業界全体の配管更新が最適化される。水道料金は誰しもが払わなければならないもの。競争を促せば、今の半額になることだってありうる」と、興奮気味に語った。
親会社の栗田工業と世界展開へ
アメリカで実績を残してきたフラクタは、世界進出ももくろむ。「自分たちだけでは限界がある」という加藤氏がタッグを組んだのは、国内水処理大手の栗田工業だ。
2018年に同社が40億円を出資し、フラクタの株式の過半数を取得。今後最大4年の間に完全子会社化される予定だ。「水道会社は地元に根付いた企業であることが多く、技術だけでは売れない。オフィスを構えて10年、20年が経つ栗田ブランドのほうが現地に入っていける」(加藤氏)。
シリコンバレーを生活の拠点とする加藤氏は、「イノベーションを起こすには、自分が世界を変えられると思っているかが大事。グーグルのアンディ・ルービンだってそうだった。シャフトはグーグルに売ったのではなく、アンディに売ったと思っている」と話す。
「ここの成功者たちは皆口をそろえて、小さく成功しても意味がない、本当に世の中がよくなるようなものを開発しなくちゃいけない、と言う。数%のテクノロジー業界のエリートたちに囲まれていると、いろいろなことを吸収できる。そういう系譜が脈々と続いている」(加藤氏)
ここ日本でも事業が本格化し始めたフラクタは、2022年までに100以上の水道事業者にツールを導入する計画だ。シリコンバレー流のイノベーションは、日本の巨大インフラにも根付くか。まだ挑戦は始まったばかりだ。
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