《財務・会計講座》伊藤園の優先株式に見る少数株主にとっての議決権の価値

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《財務・会計講座》伊藤園の優先株式に見る少数株主にとっての議決権の価値

伊藤園は2007年9月に優先株式を発行した。この優先株式は議決権がない代わりに、配当が普通株式に比べて優遇されている。優先株式とは普通株式に比べ何らかの点で優先権がついた株式であり、多くの場合、優先配当権や残余財産の優先分配権が付与される代わりに議決権がつかないという形態をとっている。

 ファイナンス理論では、株式の時価は、(1)将来の一定期間に支払われる配当の現在価値と、(2)その直後に分配される残余財産の現在価値の合計額として計算される。そうであるならば、議決権の行使によって会社の経営には、ほとんど影響力を持たない一般個人株主にとって、伊藤園の優先株は普通株式に比べ配当額が大きい分だけその時価も大きくなるはずである。実際にはどうであったのかを考察してみよう。

 2007年9月に伊藤園が発行した「第1種優先株式」(以下、「優先株式」)の具体的な内容は以下の通りである。
(1)配当

 1)普通株式に優先して支払われる優先配当権があり、普通株式配当額の125%の配当が支払われる。
 2)普通株式が無配となった場合には1株当たり15円の配当が支払われる。
 3)優先配当の全部もしくは一部が行われなかったときは、その不足分は累積し普通株式に先立って支払われる。
(2)残余財産の優先分配権
 優先株式に累積未払金がある場合を除き、残余財産の優先分配権はない。
(3)議決権
 優先株式には議決権はない。ただし、2年連続で優先配当を行う旨の決議がなされない場合には議決権が発生する。累積未払金を含め優先配当が全額支払われると議決権は再び消滅する。
(4)普通株式への転換権
 株主の意向による転換権はない。

 これを見る限り、同社の優先株式と普通株式との差異は以下に集約されよう。

(1)配当:普通株式に優先し、普通株式に支払われる配当の125%に相当する額の配当が支払われる。万一支払われなかった場合、未払い部分は累積し普通株式に優先して残余財産から支払われるため、普通株式の配当に比べリスクが低い。
(2)議決権:原則として、優先株には議決権はない。

 伊藤園の優先株式の普通株式との差異は、議決権がない代わりに、普通株式に対して配当の支払いが優先され、その金額は普通配当の125%相当の額であるという点に集約される。そうであれば、優先株式の株価は普通株式の株価を超過配当の現在価値分だけ上回るはずである(将来分配される1株当たり残存財産は優先株式も普通株式と同等であるので)。ところが、実際には優先株式が発行されて以来、その株価は普通株式の株価を下回って推移している。優先株式が市場に登場した2007年9月3日の終値は2795円と普通株式の終値である2930円を135円、率にして5%下回ったが、その後、格差は拡大し、2009年10月末には930円と普通株式の株価である1530円を大きく下回っている(格差は金額にして600円、40%)。

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