パナソニック、BtoB重視も家電に期待する理由

目立つ会社、マネシタのDNAにこそ本領がある

なぜ、パナソニックはBtoBへシフトしようとしているのか(写真:ヒラオカスタジオ)

長く続いている企業(店)は、深みのある経営資源を有し、独自の強い競争力を発揮している。京都老舗料亭の当主が口にした一言にその秘訣がある。

「継承とはただ継ぎ守るだけ。伝統とは革新である」

つまり、長寿企業になるには、各世代の当主が在任期間中に変革し、進化させなくてはならないという意味である。そこで重要なのが、既存の経営資源をどのように生かすか、応用するかだ。

デビッド・J・ティース・カリフォルニア大学バークレー校ハース経営大学院教授が組み立てた「ダイナミック・ケイパビリティ」という経営学の理論がある。これは、環境が激変している時代には、

(1) その変化を敏感に察知し(感知)
(2) 現在有している経営資源を再認識して(捕捉)
(3)ダイナミックにしなくてはならない(変革)

とする経営戦略である。ナレッジ・マネジメント(知識創造経営)の生みの親として知られる野中郁次郎・一橋大学名誉教授も「ダイナミック・ケイパビリティこそが日本企業が強みを発揮できる理論である」と評価している。

自動車関連と住宅関連は壁にぶち当たる

パナソニックの「津賀(社長)改革」は、この理論を実践したケースと言えよう。

2012年6月、社長に就任した津賀氏は、その年の10月、大幅な赤字を計上した第2四半期連結決算の発表で、業績悪化を受け「普通の会社ではないことをしっかり自覚することからスタートしなければならない」と危機状態であることを認識し(感知)、経営資源を洗い直しBtoB領域への活用を検討し実行する(捕捉)。新しい2本の大黒柱として自動車関連事業と住宅関連事業へ経営資源を重点的に傾けるという経営戦略を打ち出した(変革)。

ところが、いずれも壁にぶち当たる。とりわけ、EV(電気自動車)用電池と太陽電池で戦略提携したテスラとの関係が計画どおりにことが運ばなくなったのは、数々の報道にあるとおりだ。

そこで、パナソニックは軌道修正を余儀なくされた。2019年5月に発表された中期戦略(3カ年)では、「空間ソリューション」「現場プロセス」「インダストリアルソリューション」の3つを基幹事業と位置づけた。

基幹3事業のようなBtoB事業だけでなく、家電をはじめとするBtoC事業もソリューション、さらには、サブスクリプション(定額課金型)で稼ぐ事業システムへと変革しなくてはならないと考えた。それが、2018年に掲げた「くらしアップデート業」という概念である。

実に聞いているだけでもややこしい概念だが、BtoCからBtoBへシフトするというビジョンは何も変わっていない。

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