パナソニック、BtoB重視も家電に期待する理由

目立つ会社、マネシタのDNAにこそ本領がある

この現実を目にして、内需を深掘りする余地はまだまだ残されているのではないかと考える。このニーズに応えようとしているのが、今、BtoB分野で実践している「現場プロセスイノベーション」である。これは「BtoB事業」だが、BtoC事業で培った細かな顧客ニーズを嗅ぎ取る嗅覚が重要なカギとなっている。

この戦略を成功させるためにも、「家電の遺伝子」を再考し、蘇生させなくてはならないだろう。BtoC事業の熱を冷ますことなく、画期的な商品開発と事業システムの改善を結合して利益率を高めることが、BtoBシフトの追い風になるはずだ。津賀社長も「家電が基盤事業として元気なうちに、BtoBに大舵をいっぱいに切りたい」と考えている。だが、家電が元気でなければ、パナソニックの文化は進化しないと筆者は考える。

経営学の分野でも企業文化の研究は重要なテーマになっている。それは、単に社風のことを言っているのではない。底流に流れる叡智も含まれる。言わば、強さの源泉となる見えざる経営資源と言えよう。

パナソニックの企業文化は、より顧客の目線に合わせ、細かなところまで気配りできる「大阪商人魂」である。これこそ、パナソニックのテイストと言えよう。今や東京だ、大阪だと言っている時代ではないし、パナソニックの経営陣もそう思っている。だが、忘れてはいけない。懐メロ『大阪で生まれた女』(BORO)の替え歌ではないが、「大阪で生まれた会社やさかい♪」。

「大阪で生まれた会社」だからこそ

そこで、「大阪で生まれた会社」だからこそ忘れないでほしい企業文化を、わかりやすい比喩(事例)を持って説明しよう。

今も「(梅田=キタにある)阪神百貨店のデパ地下はいいですね」と言う大阪の人は多い。この要因を大阪の人たちに問うても、誰もが「(日常の一部になっているので)わからない」と答える。

改めて売り場を観察してみると、市場さながらの活気と猥雑さの中に潜む親しみやすさを醸し出していることに気づく。鮮魚売り場に目を向けると、大阪の下町にある市場さながらの光景が目に入る。魚の並べ方にも工夫が凝らされ、新鮮さを醸し出している。

店先では、威勢のいい男性店員が、「安いで、安いで」と大きな声を出し、客の購買欲を誘っている。愛想も実にいい。このワンシーンは、地元顧客の暗黙知を肌感覚で把握し、見事に応えている典型事例と言えよう。

パナソニックも阪神百貨店のデパ地下に等しい「簡単には説明できない競争力」を持っているはずだ。2018年に創立100周年を迎えたパナソニック。この老舗型大企業は、今、継承はしてきたが、革新に難儀している。

加護野忠男・神戸大学特命教授や山田幸三・上智大学教授の地場産業に関する研究によれば、その強さは、顧客からは見えないビジネスの仕組みにある、と指摘している。

阪神百貨店も、顧客が魅力的と感じていても「簡単には説明できない要因」が競争力の源泉となっている。「大阪の地場産業」という視点からパナソニックを見れば、大衆目線を大切にしてきた家電事業に大いなるヒントがあると考える。そのことは、津賀社長も認識しており、あちらこちらで話している。だからこそ、BtoBシフトの影に家電が隠れてしまわないように、より注意しなくてはならない。

かつて、松下電器産業(現・パナソニック)は、「マネシタ電器」と言われた。その全盛期は、松下幸之助が統治していた時代である。「マネシタ電器と呼ばれていた頃がいちばん元気だった」と前出の加護野教授は指摘する。

「マネシタ電器」の戦略は、近年、経営学の世界では、「模倣の戦略」として見直されている。今こそ、「大阪で生まれた会社」は、「模倣の戦略」で培った叡智に基づく斬新な事業システムを構築し低迷から脱してほしいものだ。

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