パナソニック、BtoB重視も家電に期待する理由 目立つ会社、マネシタのDNAにこそ本領がある

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とくに、パナソニックは松下幸之助氏自らが初代宣伝部長を務めたように「目立つこと」に力を注ぎ続けてきた企業である。今でも、どれほど巨額の広告宣伝費を使っているのかと思えるほど、テレビCMをはじめとして多くの広告を目にする。広報(PR、IR)活動にも非常に熱心である。オリンピックの公式スポンサーにもなっている。

目立つために投じた累積総額は想像を絶するほど莫大な額であろう。パナソニックが目立ち続けるためには、家電を事業としてだけではなく、広告宣伝資源として位置づけてはいかがかと思う。この資源を活用せずして、目立たない会社になってしまえば、幸之助初代宣伝部長以来、投じてきた多額の投資は回収できない。

日本の家電製品が海外で高く評価されたのはなぜか。それは、優れた家電メーカーが数多くひしめき合い、国内市場で切磋琢磨し、目の肥えた日本の消費者の洗礼を受けたからだ。そのお墨付きをいただいた商品は、海外で強い競争力を発揮したのである。

近年、日本の電機メーカーが海外市場で負けに転じた原因として、韓国、中国メーカーの価格攻勢によるところが大きいと指摘されてきたが、真因は、イノベーションを怠ったからだ。

ここで、イノベーションについて基本的な解説をしておこう。イノベーションには大きく分けて3種類ある。

1つ目はシュムペーターが言うところのブレークスルー・イノベーション。つまり、既存の製品、サービスを壊しまったく新しいものを生む「創造的破壊」である。

2つ目は、「パナソニックの中国傾注がどうにも心配な理由」(2020年3月27日配信)でも述べた、既存事業の秩序を破壊し、業界構造を劇的に変化させる「破壊的イノベーション」だ。

そして、3つ目が、カーズナーが提唱するインクリメンタル(斬新的)・イノベーションだ。津賀社長が「当社が家電や電材を中心に人に寄り添う事業で培ってきた、健康や快適など、利用者の感性に訴える価値を提供する」という発言からもわかるように、パナソニックが今、推進している戦略は、インクリメンタル・イノベーションである。

イノベーションを最大化する条件

インクリメンタル・イノベーションの成果を最大化するには、絶対的条件が2つある。

<1>既存事業の経営資源が、次世代の事業に水面下でつながるような連関性を持っていること
<2>ベースになる既存事業が元気さを持続していること

の2つである。とくに<2>の条件を満たすには、徹底した深堀りが必要である。

ここで提案したいのが、国内市場の見直しである。つまり、内需の深堀だ。人口が減少しているから、もう国内は頭打ち。だから、中間層需要の増大が期待できる中国に戦略拠点を移さなくては、と考える直線思考はいただけない。日本で斬新な製品を開発し、新たな構築した事業システムに結び付ければ、黙っていても中国から「松下(Panasonic)」が求められる、という形にしていかなくてはならない。

今のパナソニックには、「もうBtoC事業(家電)はだめなんだ」「日本で大きな成長は見込めない」という思い込みがはびこり、石にかじりついてでも、BtoC分野でヒット商品を生み出そうとする気概が見られなくなったような気がする。

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