パナソニック、BtoB重視も家電に期待する理由

目立つ会社、マネシタのDNAにこそ本領がある

2020年3月期の家電事業の売上高営業利益率は2.8%と不本意な結果になる見通し。この数字を世界の業界平均である7.5%にまで引き上げるには、並大抵の改革ではおぼつかない。商品力の強化だけで追いつくものではない。経営学で「事業を展開していくうえでの、取引、情報、モノの流れにおける組織間の関係」と定義される「事業システム」自体を変えなくてはならない。

パナソニックは、日本だけでなく中国でも「家電のIoT化」(ホームIoT)を推進しようとしている。その一環として、家庭向けのエネルギーマネジメント・システム(HEMS:ヘムス)の新製品として、エアコンなどの家電を自動で制御し、快適さを保ちながら節電する制御装置「AiSEG(アイセグ)」の普及を狙う。

さらに、この製品を「ホームIoT」のデファクト・スタンダード(事実上の標準規格)にするため、他社にも採用を呼びかけている。パナソニック製品の売れ行きに弾みがつくだけでなく、ライセンス料がパナソニックの収益にもなる。

1970年代後半から約10年間続いた「家庭用ビデオ(VTR)のVHS vs.ベータ規格戦争」において、パナソニック(グループ)はVHS方式VTRを拡販するため、他社にもVHS規格を開放して採用を呼びかけ、仲間づくりに尽力した。この戦略は、ネットワークに参加するメンバーが増えるほど、規格を作った企業だけでなく、その他参加メンバーの効用が増大するとする「ネットワークの外部性」で説明される。

「AiSEG(アイセグ)」は、優れた「事業システム」を構築する第一歩となるかもしれないが、その前にしなくてはならない「基本の“き”」がある。絞った雑巾を絞るかのごとく知恵を絞り、既存事業の経営資源を生かすことだ。

例えば、中国で力を入れようとしている家電である。同事業だけではないが、津賀社長は、蓄積された経営資源が、今後の持続的成長につながるようになっていないことに不満を感じている。たしかに、将来に向けてどころか、現在のパナソニックの家電はどうなってしまったのかと思うことが少なくない。

「これ、儲かりまっか」

松下幸之助氏が健在だったころ、新製品が発売される前、事業部長はその製品を台車に載せて幸之助氏の前まで運んだ。開口一番、幸之助氏は必ずこう問いかけた。

「これ、儲かりまっか」

こう言われた事業部長は、真綿で首を締められるような思いだった。

筆者は、津賀社長が推進するBtoBシフトを決して否定しているわけではないが、パナソニックに「儲かりまっせ」と自信たっぷりに答えられる爆発的ヒット商品を期待している。単品売り切り型のヒット商品ではなく、日銭を稼ぎ続けられる形が望ましい。だからこそ「ヒットにこだわる貪欲さ」が今のパナソニックには求められるのではないか。

企業スポーツに力を入れ続けるのもいいが、投資対効果は見えにくい。対して爆発的ヒット商品は、収益の増大に貢献するだけでなく、最大の広報(PRとIR)・宣伝効果を生む。さらにリクルーティングにも好影響を及ぼし、優秀な人材の確保にもつながる。これこそが、(BtoC事業を看板にしてきた)メーカー本来の姿である。

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