パナソニック、BtoB重視も家電に期待する理由

目立つ会社、マネシタのDNAにこそ本領がある

ではなぜ、パナソニックはBtoBへシフトしようとしているのか。以下、パナソニックが発表した公式見解ではなく、筆者が気づいた10の理由を列記してみる。本来、経営戦略とはもっと複雑かつ精緻なものでなくてはならないが、わかりやすく説明するためあえて単純化してみた。

① 約27万人(2019年12月現在)にも上る従業員を食べさせるため、大きな売り上げを確保できる「大黒柱」が複数求められる
② 中村邦夫、大坪文雄、前2代続いた社長のもとでは、基本的にBtoC事業の「カイゼン」、コストダウンを柱とする経営戦略を推し進めてきたが、結果として抜本的な構造改革につながらなかった
③ 国内依存度が高いBtoC事業は、人口減少で大きな成長が期待できない
④ BtoC事業で「破壊的イノベーション」を実現できない現実に直面し、苦悩している
⑤ 海外家電市場では、ハイアール、サムスン、LGなど中韓勢力の台頭が著しく、厳しい競争環境にさらされている
⑥ 事業構造をBtoCからBtoBへシフトすることで、高収益体質へ脱皮できる
⑦ 現場密着型の「泥臭いBtoB事業」により、日立製作所、東芝、三菱電機などの競合他社とは一味違う競争力を発揮できる
⑧ BtoB事業に活かせる経営資源を持ちながらも、これまで有効に使えていなかった。家電事業や旧パナソニック電工(元松下電工)で蓄積した技術、商品開発力が「ほかの市場」で応用できると考えた
⑨ 津賀社長の出身畑である自動車関連分野で培った経験と、子会社化した三洋電機が得意とする二次電池の技術を活かせる
⑩ 事業の転地により、従業員の心の転地も図り、「パナソニックの文化大革命」を実現できる

「高度経済成長」を支えてきた「栄光の歴史」

実は、パナソニックはBtoBという言葉が一般化する前から、同事業に力を入れてきたメーカーであった。旧松下通信工業や旧松下電子部品など、各分野で大きなシェアを占めるグループ企業が存在した。しかしながら、改めてBtoCからBtoBへの転換が注目されているのは、「三種の神器」と呼ばれたテレビ、洗濯機、冷蔵庫をはじめとする家電製品が昭和30年代にブレークして以降、松下電器産業(現・パナソニック)の「高度経済成長」を支えてきた「栄光の歴史」があるからだ。

それにより、「パナソニック=家電」というイメージが定着している。現在、売り上げ比率でBtoBがBtoCを上回っていても、いまだに家電はグループ売上高の3割を占める「パナソニックの顔」である。家電はCMや量販店の店頭などで、人々の目に触れる機会が多いことから、今も同社は「大手家電メーカー」と呼ばれる。大学生に至っては、パナソニックと聞けば、家電以外の事業をイメージすることさえできない。

ところが現状は「看板倒れ」となっている。振り返れば、2008年に起こったリーマンショックの後、パナソニックは景気後退の影響から抜け出せず赤字を出し続けていた。

その最大の要因は、2本の「大黒柱」が大きく傷ついたからである。具体的には、液晶に負けてしまったプラズマテレビ事業と、ガラケーで高い技術力を誇りながら、スマホの時代になり“iPhone”だけでなく、中国、韓国メーカーにお株を奪われてしまった携帯電話事業である。

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