アメリカはコロナ経済危機にどう立ち向かうか トランプ政権が切り札にするハイテク戦略

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世界観光旅行の一般常識として、ヨーロッパから太平洋地域への観光客、アジアから太平洋地域への観光客は、いずれもアメリカ西海岸のサンフランシスコ・ツアーとセットになっていることが多い。カリフォルニア州、とりわけ、サンフランシスコは、民主党の牙城である。サンフランシスコ地域で感染が広がれば、民主党の政治基盤は大きく揺らぐ。

ドナルド・レーガン政権時代には、カリフォルニア州は共和党の州だった。民主党が支配する州になったのは、ビル・クリントン政権時代に、シリコンバレーの半導体業界を保護・支援したからだ。ITブームの中で、シリコンバレーは先進的リベラル派がリードすることになり、カリフォルニア州全体を民主党寄りに変化させたのだった。

シリコンバレーが民主党の政治基盤を揺るがす

日本で見逃されているのは、カリフォルニア州ではサンフランシスコから目と鼻の先のシリコンバレーが、新型コロナウイルスの感染リスクが非常に大きいと警戒されている事実である。地元メディアは、シリコンバレーでは国際的な仕事や人々の交流が多いため、新型コロナウイルスの感染は狭い地域で一気に広がる可能性を危惧している。シリコンバレーで働く人たちの多くは、サンフランシスコに住み、「テク・シャトル・バス」と呼ばれるバスで通勤してきたことで知られる。新型コロナウイルスの温床となりかねない。

そのためコンピュータ・ネットワークを通じての遠隔地勤務に切り替える動きが広まっている。新型コロナウイルスの感染が広がれば、多くのハイテク企業がカリフォルニアを離れ、アメリカの南部や中央部のハイテク都市に移る可能性がある。それは、シリコンバレーという巨大な資金力と政治力を持つ民主党穏健派勢力が、カリフォルニア州から大挙して抜け出すことを意味する。

カリフォルニア州では、バーニー・サンダース候補が、スーパーチューズデーで、民主党穏健派の中軸であるジョー・バイデン候補に大差で勝利したことから明らかなように、仮に、シリコンバレーがカリフォルニア州外に移ることになれば、カリフォルニア州の政治地図は民主党急進派が穏健派より強くなる可能性がある。

民主党エスタブリッシュメントである民主党穏健派の力が弱まれば、民主党急進派のみならず、相対的には、カリフォルニア州内の共和党の力が強まる。いまのところ民主党穏健派に有利な下院議員の選挙区割りも、変更されることになるだろう。

こうしたシリコンバレーの移動が本当に起きるとすれば、それに伴ってカリフォルニア州の政治力学は激変し、共和党と民主党穏健派、民主党急進派の関係性を変えることになる。トランプ大統領が、民主党にも新型コロナウイルスに対する「共闘」を呼びかけているのは、そうした民主党の内情を踏まえたうえで、今後のハイテク戦略も含めて、「アメリカファースト」のリーダーシップを示すためである。

湯浅 卓 米国弁護士

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ゆあさ たかし / Takashi Yuasa

米国弁護士(ニューヨーク州、ワシントンD.C.)の資格を持つ。東大法学部卒業後、UCLA、コロンビア、ハーバードの各ロースクールに学ぶ。ロックフェラーセンターの三菱地所への売却案件(1989年)では、ロックフェラーグループのアドバイザーの中軸として活躍した。映画評論家、学術分野での寄付普及などでも活躍。桃山学院大学客員教授。

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