新型コロナウイルスの感染が拡大しているニューヨーク州など3州の住民に対して、強制的な移動制限をかける可能性を検討中だ――。アメリカのドナルド・トランプ大統領は3月28日、雨の中、自ら傘をさしながら記者団にこう語りかけた。
この発言に対して猛反発したのが、ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事だ。「州政府に対する連邦政府の宣戦布告であり、違法だ」。トランプ大統領は、すぐさま強制的な移動制限案を引っ込め、同夜、疾病予防管理センター(CDC)を通じて、3州の住民に対して、14日間、他州への不要不急の移動を控えるよう要請することになった。
この措置について「反トランプ」メディアは、大統領の強制的な移動制限案が州知事たちの強い反対によって撤回された、と大々的に報じた。その報道の仕方がいかに一方的かつ表面的なものであるか、“メディア通”のトランプ大統領はすでにお見通しだろう。
筆者は、トランプ大統領の一連の新型コロナ危機戦略が、実はこの秋の大統領選にとって大きな転換点になるのではないかと読んでいる。
「反トランプ」メディアが伝えないトランプ流危機管理
まず、トランプ大統領がニューヨーク地域の住民に対して、強制的な移動制限の可能性を示唆した真意を考えてみたい。
同地域は新型コロナウイルス感染に関するテストの実施を最も熱心に進めてきている。そのテスト数が多いために感染者数も増大していると、アメリカのメディアは報じている。トランプ大統領は、そんな安易なメディアの報道姿勢を批判してみせた。
と同時に、厳しい移動制限案を明示することによって、アメリカ全体の新型コロナウイルスに対する危機管理において、目下、感染拡大が突出しているニューヨーク地域が「中心的な地位」を占めていることを示した。これによって、事の本質を全米にディスクローズして見せようとした、というわけだ。
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