「トランプ対抗馬」コロナで浮上した意外な人物 民主党候補はバイデン氏で決まりではない

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その意味において、「戦時の大統領」としてのリーダーシップ発揮を眼目とするトランプ大統領にとって、今回のコロナ危機をめぐる一連の動きは大統領再選に向けた試金石になる。

トランプの相手はバイデンからクオモに代わるか

見逃せないのは、トランプ大統領がニューヨーク地域の強制的な移動制限案を語る前日の3月27日、FOXテレビ報道キャスターのタッカー・カールソン氏が11月の大統領選について驚くべき予測を行ったことである。民主党のジョー・バイデン候補周辺からの情報として、バイデン候補は大統領選挙まで政治的に持ちこたえられず、民主党としてもそれ以外の候補への切り替えを望んでいるというのだ。

カールソン氏は、バイデン氏が民主党の最終候補にならないという予測について「最も誠実かつ完全にそう思う」と、生放送で語っている。さらに、民主党が代わりに据える可能性の高い候補として、クオモ・ニューヨーク州知事の名を挙げている。

クオモ氏自身はどう思っているのか。筆者と親しいベテランのイタリア系アメリカ人弁護士たちによると、クオモ氏は父親のマリオ・クオモ・元ニューヨーク州知事の時代から、その政治的野心と手腕は広く知られていたという。今回、バイデン氏に代わって民主党の最終的な大統領候補になることは当人にとって絶好のチャンスであり、それを狙っているのは間違いない、と口をそろえる。

はたして、そんな予測は現実に起こりうるのか。今回の候補者争いの過程でも明らかだが、民主党は党として候補者に圧力をかけ、撤退に追い込む戦法をとってきた。

例えば、スーパーチューズデーの直前に、それまでアイオワ州で1位、ニューハンプシャー州で2位だったピート・ブティジェッジ候補を、彼の「天敵」的存在だったエイミー・クロブシャー候補とともに撤退させると同時に、バイデン候補への支持を表明させている。

さらに、カリフォルニア州やフロリダ州でバイデン候補の票を食う可能性が高かったマイケル・ブルームバーグ候補に対して、彼の「天敵」であるエリザベス・ウォーレン候補の撤退を先延ばしした。そのうえでブルームバーグ候補の過去の女性スキャンダルを指摘させ、ブルームバーグ候補を撤退に追い込んでいる。

この民主党候補者たちに対する民主党中枢からの圧倒的なコントロール力をもってすれば、バイデン候補がトップに立っていても、他の候補に取って代わらせることは、決して難しいことではない。であれば、強制移動制限をめぐってトランプ大統領に異を唱えて、名を上げたクオモ知事が、民主党最終大統領候補の地位を射止めることは十分ありうる。

そのクオモ氏はニューヨーク州知事として、新型コロナウイルス問題を理由に、同州における民主党予備選を4月から6月に延期している。今や中国・武漢を超えるコロナ禍のホットスポットとなってしまったニューヨーク州における危機管理が、大統領選の行方を左右する可能性も高まってきた。

湯浅 卓 米国弁護士

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ゆあさ たかし / Takashi Yuasa

米国弁護士(ニューヨーク州、ワシントンD.C.)の資格を持つ。東大法学部卒業後、UCLA、コロンビア、ハーバードの各ロースクールに学ぶ。ロックフェラーセンターの三菱地所への売却案件(1989年)では、ロックフェラーグループのアドバイザーの中軸として活躍した。映画評論家、学術分野での寄付普及などでも活躍。桃山学院大学客員教授。

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