アメリカのドナルド・トランプ大統領は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)に対して、国家非常事態を宣言し、緊急対策を次々に打ち出している。そうした中で、ウォール街の株価は1987年のブラックマンデー(暗黒の月曜日)以来の大暴落を演じた。「反トランプ」メディアは、この株価大暴落でトランプ再選の可能性が消えたかのように厳しく報じている。
しかし、トランプ大統領はこの株価大暴落に動じていないだろう。「反トランプ」メディアの若いジャーナリストたちは、ブラックマンデーを肌で経験していないから、その後の短期間の急回復を知らない。もともとウォール街はメディアとの接触を極端に嫌っているので、本当のウォール街情報はメディアには流れない。メディアのウォール街情報は、「木を見て森を見ず」の傾向があり、的外れのことが少なくない。
新ワクチン開発などが視野に入っている
トランプ大統領はウォール街の見方、判断を熟知しており、「反トランプ」メディアのように、マーケットの急変にうろたえたりしないはずだ。ウォール街では、新型コロナウイルスの感染拡大のような、世界を揺るがす大問題が発生すれば、株価が10%程度急落することは、当然、起こってしかるべきと判断している。
トランプ大統領が今回の株価大暴落に動じないと思われるのは、その先を見通す視野の中に、新型コロナウイルスに対抗する新ワクチンの開発や、中国とのハイテク覇権争いに備える宇宙軍構想など、「アメリカファースト」のハイテク戦略が、しっかり入っているからだ。
ウォール街は、NYSE(ニューヨーク証券取引所)とNASDAQ(ナスダック)の2本柱で成り立っているが、若いハイテク企業が多いNASDAQのほうが不安定になりやすい。当面、アメリカにとって最も重要なのは、マーケットが安定することであり、トランプ大統領の「アメリカファースト」のハイテク戦略はマーケット安定のためにも好材料だ。
ウォール街はつねに未来志向であり、海外からコントロールを受けない安全保障志向が強い。そのため「経済安全保障と軍事安全保障の要としてのハイテク分野」を重視する傾向が強い。トランプ大統領にとって、ハイテクは「アメリカファースト」の有力な戦略分野という自負がある。ジェームズ・マティス前国防長官の反対を押し切って、宇宙軍構想を実現させて、支持者の絶大な拍手喝采を浴びたことは記憶に新しい。
トランプ大統領が、中国のハイテク企業ファーウェイの違法性を外に向かって警鐘を鳴らしながら、その内に温めているのは、「アメリカファースト」のハイテク戦略と言っていい。トランプ政権2期目における宇宙軍技術のうち、軍事安全保障以外の経済安全保障分野における宇宙技術の商業化という狙いがある。
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