アメリカ民主党の大統領候補指名争いは、多くの州で同時に予備選挙が開かれた3月3日のスーパーチューズデー以降、ジョー・バイデン候補とバーニー・サンダース候補の対決という形になっている。
ただ、どちらが勝つにせよ、共和党のドナルド・トランプ大統領は強気だ。
ほかでもない。トランプ大統領は今年2月の上院の弾劾裁判で勝利を得ることができたからだ。以来、「反トランプ」の論陣を張るメディアに対しては、一段と対決姿勢を強めている。この上院での弾劾裁判は、共和党多数による「数の論理」で勝っただけでなく、「法律論」でも勝利した。
「大統領権限の濫用」では大統領を弾劾できない
本欄でも何度か登場した、アラン・ダーショウィッツ、ハーバード大学ロースクール名誉教授は、トランプ大統領側の弁護人の1人として、上院の弾劾裁判に参加していた。同教授は、「大統領権限の濫用」を根拠に、トランプ大統領を弾劾することはできないと、全米向けテレビ・カメラの前で何度も熱弁を振るった。
アメリカ刑法の世界では、約50人のスーパー弁護士たちがいるが、同教授は、そのトップクラスの1人であり、さらにアメリカ憲法の専門家として、憲法と刑法にまたがる領域で同教授の右に出る者はいないと言われるほどの存在だ。
上院の弾劾裁判を通じて、「反トランプ」メディアは、「大統領権限の濫用」を論拠とする民主党下院の論客を支持してきた。実は、この民主党側の論客は、数年前、アメリカ公共テレビサービス局(PBS)において、「アメリカ憲法における大統領権限と国際刑法」という論点で同教授と公開討論をした人物だ。
そのときのPBSテレビ番組視聴者への意見調査では、同教授の意見が、その論客の意見を大きくリードし、視聴者の支持を得たことがあり、今回、同じ論客による民主党側の「大統領権限の濫用」による弾劾論に対して、同教授が法理論的に論破することは、いとも容易に想像することができた。
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