ミュラー特別検察官はトランプ大統領の証人尋問を最後まで狙っていたが、ダーショウィッツ名誉教授が明快に解き明かしたように、アメリカ法には「偽証の罠(パージャリー・トラップ)」という法理がある。それによると、トランプ大統領を直接、口頭尋問できないことになっている。そのため、ミュラー特別検察官は延々2年に及ぶロシア疑惑調査に幕を下ろさざるをえなかったのである。
ミュラー特別検察官と比べると、はるかにリベラルなウォーレン候補が、なぜ、トランプ大統領の弾劾追及にこだわり続けたのか。一般的に、民主党急進派の人たちは、ダーショウィッツ名誉教授のような刑事弁護士ではない。ウォーレン候補は、破産法の権威ではあるが、刑事弁護士ではない。その違いがあったからかどうか、明らかではない。
結局、アメリカの「反トランプ」メディアは、ウクライナ問題での「わいろ」論でも、ロシア疑惑問題でも、民主党サイドの自己矛盾の議論に振り回されて、トランプ大統領と「勝てない法律論」で争うことになっていると言えよう。
トランプ大統領にしてみれば、「反トランプ」メディアの攻撃に対して、「魔女裁判」と繰り返し言い立てて、「弾劾冤罪」を強烈にアピールするという対抗手段をとる。「勝てない法律論」を押しつけようとする「反トランプ」メディアに対して、「弾劾冤罪」を叫ぶトランプ大統領の大声は、負け犬の遠吠えではなく、それなりに筋が通っていると思う人たちが増えてきている、と言っても過言ではあるまい。
ブティジェッジ候補は、自らゲイであることを公言した大統領候補者として、いまや知らない人はいないが、実務的な対メディア対策については、海千山千の辣腕女性コンサルタントが仕切っていた。「ブティジェッジ旋風」はそこから生まれていたので、メディア慣れしたトランプ大統領にとっては、メディアのプロ同士の気楽さから、ブティジェッジ候補とはあまり争う気がしなかったのではないか。
トランプ大統領の「メディア人」としての評価も
ともかく、ギャロップ調査が示すように、共和党の支持者が全米市民の中で増えているという状況が続けば、それ自体、アメリカ政治史上の大変化であろう。今後、上院や下院の共和党議員が勢いを増す可能性がある。
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