「野球手帳」はNYBOCの事業として制作することが決まった。編集は山本智章が担当した。
「NYBOC副理事長になった石川先生や新潟県高野連の富樫会長からは“野球少年は高校野球に進む前に、いろんな障害を抱えてしまう、これを何とか回避したい”と言われました。
手帳の内容については“全部お任せします”ということでしたので、私が理学療法士とともに企画、作成しました。子どもたちがすべての場面で使えるように、検診はもちろん、練習やケアの方法、セルフチェックの方法も紹介しました。
指導者だけでなく、保護者が子どもたちと一緒に読んでもらえるようできるだけ実践的に役立つ内容にしました。私たち医療の視点からの問題意識をすべて織り込み、障害予防と選手の育成を両立させるための手帳になりました」
筆者が感心するのは、新潟県の「野球手帳」が極めて機能的で、実用的なことだ。
高校野球関連の印刷物と言えば「青少年の心身の健全な育成に寄与し」など大層な精神論から始まることが多いのだが、「野球手帳」は「手帳の目的と使い方」から始まっている。
冒頭には「この手帳は野球を始めた皆さんが、野球を楽しみながら故障しない強い選手になるための手帳です。小学生は、お父さん、お母さんと一度読んでください」と書かれている。
「身体を守る知識」がわかりやすく説明
コンテンツは9章からなっている。
2. 少年野球で多い故障について
3. 障害予防セルフチェック
4. ストレッチング
5. 投球動作の基本
6. 投球数のガイドライン
7. クールダウン、アイシング
8. 怪我をしたときの応急処置
9. 野球肘検診について
野球をするうえで知っておくべき「身体を守る知識」がわかりやすく説明されている。
球数制限は、この時点ですでにガイドラインが示されているのだ。さらに野球障害の既往歴も記入できるようになっている。
この小冊子は、初版2万部が印刷され、新潟県内の小学5年生から中学3年生までに配布された。
制作、印刷費用は、新潟県高野連が出した。これも他県では考えられない。ほかの地方では、高校野球部がほかの少年野球と無断で交流すれば、お目玉を食らう。ましてや高野連の予算で、他団体が使う印刷物を作ることなどありえない。
「読売新聞の夕刊に野球手帳の記事が出たら、翌日、全国から私の勤務する病院に300件くらい電話がかかってきました。このような情報を必要とする人がいるんだな、と実感しました。指導者のほか、保護者からもたくさん連絡をいただきました」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら