新型コロナウイルスの感染拡大でプロ野球は開幕が延期、当面の活動を休止する球団が続出する中、あるユニークな球団が”球春”を待っている。
チームの名前は東京ヴェルディ・バンバータ。東京都内を中心に活動する社会人軟式野球クラブだ。創設者で代表兼監督を務めるのはデザイン家電の「amadana」のCEOでもある熊本浩志だ。
amadana(アマダナ)については、日頃、野球ばかり追いかけている筆者よりも、読者各位のほうが詳しいと思う。
シンプルな文字と凹凸のないボタンなどのすっきりしたデザインと使いやすさが好評な家電製品、大人の雰囲気と「遊び心」がそそるスマホなど、amadanaは、常に日本人のライフスタイルに響くデザインを投げかけてきた。
その原点が、「野球」にあると聞けば、読者各位は驚くのではないか。
創業者で、amadanaグループCEOの熊本浩志の話は、これまで聞いたことのない破天荒なものだった。
ラガーマンに教わった“弱者の野球”
「僕は、人が価値がないと思うものが好きなんです。衰退してしまったもの、昔はすごかったけど今、マッチしていないもの。そこに人がいなくなったもの。マジョリティに対抗したマイノリティのポテンシャルを見つけるのが趣味なんです。
amadanaのローテクハイデザインは、そういう僕の趣味から生まれています。野球でも、硬式野球がメジャーで、軟式がマイナーで、みたいな図式で言えば、軟式野球がどちらかと言えば好きですね」
そんな熊本の原点は、故郷・宮崎にある。
「家は電気屋でした。1980年代には家電業界は花形でした。各メーカーの代表的な家電は、ほぼすべて家にありました。その家電から流れてくる音楽や映画に触れていましたし、お客さんがディスコやアパレルのお店が多かったので、ファッションにもどっぷりつかったマセガキだったんですね。
でも、なぜか野球も好きだった。中学は全国大会で優勝するような名門野球部でしたが、高校は宮崎西高という進学校に入りました。勉強はできるけど野球は弱小。練習時間は1時間しかなかった。監督は里岡勝郎っていう不思議な人だった。ラグビーのトップ選手でした。僕はラガーマンに野球を教わったんですよ(笑)。
里岡監督は『ラグビーは無理だけど野球っていうのはお前らでも勝てる』といつも言っていた。そして、弱者は敗者じゃないということを、板書で説明した。野球部なのに座学が多かったんですよ」
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