熊本は、amadanaで注目されるようになってからも、ビジネス書の類は一切書かなかった。毎年のようにやりたいこと、夢中になるものが変わる熊本は、本を出すことで自分のドメインを縛りたくなかったのだ。しかし、講談社の編集者が熱心にアプローチする中で「野球の本なら出してもいいか」と思うようになった。
「2010年に『「たかが草野球」で人生が変わる』という本を出した。帯は古田敦也さんにお願いした。僕自身も本にまとめるとやりたいことが明文化されてクリアになった。本も結構話題になって、感想文を書いてきた人間が、チームに入団したりした。目標なく、自然に進化して 自分と波長の合う人が寄ってきて一緒になるという僕のビジネスと同じスタイルで、東京バンバータも成長していったんですね」
「遊び」だったものが、ビジネスマターとして勝手に成長し始める。それが『amadana流』と言えようか。東京バンバータは、軟式野球の枠を超えて、野球界、そしてスポーツ界に大きな波紋を起こしつつある。
自分がやってきたことに、野球が歩み寄ってきた
「AIやロボティクスが人間の働き方やスキルを変えつつあります。これまでは、言われたことを設計図通りにきっちりできることが評価されてきましたが、設計図がロボティクスに置き換わるとともに、人間の仕事は決断するとか、問題提起するとか、本来、人間がやるべき仕事に代わりつつあります。答えがない時代になったんですね、子供にも紋切り型の教育はできなくなります。
そして、余暇も増えます。余暇の経済が重要になります。そうなるとこれまで数値化できなかった、食やアート、エンターテインメントが重要になってくる。スポーツも『体育』ではなくて、やって楽しんだり、見て楽しんだりするものになる。体育型野球もエンターテインメントの要素がないと、衰退するのが目に見えています。今の野球界ではすでに起こっていることですが。
僕は東京バンバータで、いろんなフェーズでその時代に合ったデザインをした。表層的なデザインだけでなく、メディアのデザイン(伝える)も。そういうことで、注目された。自分がやってきたことに、野球が歩み寄ってきたという感じですね」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら