「日本が悪い」と口癖のように言う人々の共通点 いったい何に期待をしているのか?
楠木:自分の思いどおりにならないことに、ひたすら文句を言っている人っていますよね。時代が悪い、環境が悪い、はては日本が悪いといった具合に。
同じように、過去にさかのぼる人もいます。「高度経済成長の頃はよかった。今は少子高齢化で時代がよくない」という話です。これは、裏を返すと将来に期待しすぎなんですよね。こういうのが、自分がない状態、自分本位でない状態です。
秦:いますね、そういう人。
楠木:何があっても、最終的には「日本が悪い、日本がイケてない」っていう答えに行き着く。彼らをよく見てみると、どうも自分が調子よくないっていうことなんですね。自分が調子よくない、パッとしないってことを認めるとつらいので、結局は「日本が悪い」っていう話にしちゃってるんですね。
で、私はこういう人たちを見ると、思わずツッコミたくなるんです。「じゃあ、どこがいいんですか?」と。例えば、「中国はどうやらイノベーションが進んでいるらしいからイケてる!」と言う人がいますが、そういう人には「では聞くけれど、中国の国家システムがいいの?」と。
物事にはいい面も悪い面もあります。全面的に「優れた国家システム」などありえない。これは一例ですが、ようするに他責志向ですね。
秦:同じように、時代についても言えますよね。例えば「この不況が悪い」というように、時代のせいにする。「いつならいいの?」と聞き返したくなります。
楠木:まったくそのとおりです。高度成長期だったらいいの? 受験戦争と交通戦争でインフレもすごかったよ。応仁の乱の時代なんてどう? 道端で殺されてたかもよ。縄文時代は? 竪穴式住居で、冬は寒いぞ。もう、どの時代でも一緒なんです。
秦:どの時代でも、それなりにいろいろありますよね。
自分の「好き」を中心に考える
楠木:前回の対談でもお話ししたように、セルフィッシュな人を思い浮かべながら読み進めていくと、より実態が見えてきます。世の中にいる芸術活動をされている、いわゆるアーティストと呼ばれる方々は、非常にセルフィッシュなのではないかと思っています。自分の感性に正直になって、自分の世界観を表現する。そこには誰にも期待していないし、もちろん未来にも期待していない。
秦:確かに、誰かに理解されようとか、どう評価されるかといった考えはないように見えますね。