「日本が悪い」と口癖のように言う人々の共通点

いったい何に期待をしているのか?

楠木:自分の思いどおりにならないことに、ひたすら文句を言っている人っていますよね。時代が悪い、環境が悪い、はては日本が悪いといった具合に。

楠木 建 (くすのき けん)/1964年、東京都生まれ。1992年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。一橋大学商学部助教授および同イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年より現職。専攻は競争戦略とイノベーション。著書に『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)、『「好き嫌い」と経営』『「好き嫌い」と才能』(ともに共著、東洋経済新報社)、『経営センスの論理』(新潮新書)などがある(撮影:尾形文繁)

同じように、過去にさかのぼる人もいます。「高度経済成長の頃はよかった。今は少子高齢化で時代がよくない」という話です。これは、裏を返すと将来に期待しすぎなんですよね。こういうのが、自分がない状態、自分本位でない状態です。

:いますね、そういう人。

楠木:何があっても、最終的には「日本が悪い、日本がイケてない」っていう答えに行き着く。彼らをよく見てみると、どうも自分が調子よくないっていうことなんですね。自分が調子よくない、パッとしないってことを認めるとつらいので、結局は「日本が悪い」っていう話にしちゃってるんですね。

で、私はこういう人たちを見ると、思わずツッコミたくなるんです。「じゃあ、どこがいいんですか?」と。例えば、「中国はどうやらイノベーションが進んでいるらしいからイケてる!」と言う人がいますが、そういう人には「では聞くけれど、中国の国家システムがいいの?」と。

物事にはいい面も悪い面もあります。全面的に「優れた国家システム」などありえない。これは一例ですが、ようするに他責志向ですね。

:同じように、時代についても言えますよね。例えば「この不況が悪い」というように、時代のせいにする。「いつならいいの?」と聞き返したくなります。

楠木:まったくそのとおりです。高度成長期だったらいいの? 受験戦争と交通戦争でインフレもすごかったよ。応仁の乱の時代なんてどう? 道端で殺されてたかもよ。縄文時代は? 竪穴式住居で、冬は寒いぞ。もう、どの時代でも一緒なんです。

:どの時代でも、それなりにいろいろありますよね。

自分の「好き」を中心に考える

楠木前回の対談でもお話ししたように、セルフィッシュな人を思い浮かべながら読み進めていくと、より実態が見えてきます。世の中にいる芸術活動をされている、いわゆるアーティストと呼ばれる方々は、非常にセルフィッシュなのではないかと思っています。自分の感性に正直になって、自分の世界観を表現する。そこには誰にも期待していないし、もちろん未来にも期待していない。

:確かに、誰かに理解されようとか、どう評価されるかといった考えはないように見えますね。

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