イラン「新型コロナ致死率」が突出して高い事情

体制の情報隠蔽疑惑に世界から厳しい視線

中国政府は3月4、5の両日、航空機2機でイランから中国国民311人を退避させた。新型コロナウイルスの検査を実施したところ、11人の陽性が確認された。イランに滞在していた中国人の感染率は3.5%で、この数値をイラン国民に当てはめると、約570万人が感染していることになる。

イランでは政府関係者や国会議員の間の感染率が高いのも特徴的。3月3日時点では、290人の国会議員中、23人が新型コロナウイルスに感染しており、その率は7.9%。この確率をイラン国民に当てはめると、約640万人が感染していると推測できる。

政府や議会関係者は、会議や会合で濃厚接触する機会が多く、一般の市民よりも高い確率で広がった可能性はあるものの、実態は当局発表よりも深刻と言えそうだ。

感染者数に関してイランの公式発表の信憑性は疑われており、状況は深刻さを増している。あるテヘラン市民は「当局の発表を信じている人は少ない。咳をするなど新型コロナウイルスのような症状を示している人も身近にいる。薬局にはマスクはなく、人々の政府への不信感は強まっている」と話す。

巡礼や宗教儀礼で濃厚接触か

イランは欧米の経済制裁により、最初に新型コロナウイルスが確認された中国と経済的な関係は密接だ。イランでは首都テヘラン南方にある聖地コムで最初に感染例が確認されたが、中国の労働者ないしは中国・武漢を訪れたイラン人商人がウイルスを持ち込んだ可能性があるとされている。

シーア派の聖地コムは、群衆が集う毎週金曜日の集団礼拝や密室での宗教的な行事、研究で多くの人々の交流があり、ここからテヘランをはじめとしたイラン全土に広がったようだ。

聖地では、歴史的な聖人らの墓所に参拝者が手を触れたり、宗教儀礼の際にウイルスに接触しかねないケースが多い。イランの政府や議会関係者に感染者が多いのは、イスラム聖職者が指導する体制を支える関係者がテヘランとコムを行き来したことも理由と考えられる。

イランが世界有数の新型コロナウイルスの感染率が高い国になったのは、医療環境のほか国民の健康よりも体制の維持を優先させる体質が大きい。イランはもともと、中東諸国の中では高い水準の医療や保健の体制を誇ってきたが、経済制裁の影響で医療のインフラ水準が低下。世界銀行によると、人口1000人当たりの病床数は1.5で世界平均の2.7よりも低い。

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