イラン「新型コロナ致死率」が突出して高い事情

体制の情報隠蔽疑惑に世界から厳しい視線

病院関係者は「マスクなど必要な装備や医薬品が極度に不足している」と語っている。このため、イランは世界の中でも突出して致死率が高い。イラン当局の発表によると、8〜18%に達する。世界保健機関(WHO)は、致死率は2〜5%の間にとどまるようだとしているのとは対照的だ。

経済制裁の圧迫を受ける医療の質低下に加え、前近代的な宗教思想も地方や農村部で致死率を高める要因となる。コムの宗教指導者は「新型コロナウイルスは宗教心で克服せよ。礼拝に来ない理由にはならない」と呼びかけていた。

体制維持優先で陰謀論

さらに、体制が流布する陰謀論も事態の悪化に拍車を掛ける。アメリカとの対決路線を突き進む最高指導者ハメネイ師が率いる体制は、「新型コロナウイルスがイランで拡散しているとの情報操作は、恐怖を蔓延させて国家の活動を停止させようとする敵(アメリカ)の策略だ」と主張し、移動制限や学校の休校といった措置が後手に回ってしまった。

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イランは、国威発揚を図るために重要な革命記念日を2月11日に迎え、21日には国会選挙があった。宗教的な価値観を押しつけるイランの体制に対する国民の不満は高まり、今年初めのウクライナ機誤射事件の隠蔽疑惑でさらに不満が高揚。

選挙前の2月19日になってコムでの新型ウイルス感染による初めての犠牲者が公表されたが、感染実態はその段階でより深刻だったとの見方が一般的だ。選挙の投票率は42.57%で、1979年のイスラム革命以降の国会選で最低を記録したが、こうした実態を認めた場合、投票率はさらに低くなっていた可能性があり、体制が実態の隠蔽に動いたとみられている。

イランによる新型コロナウイルスの実態隠蔽疑惑は、イラン国内への影響にとどまらない。全世界に住むイスラム教の9割近くがスンニ派だが、イランが国教とするシーア派も10〜13%に上る。

イランの新型コロナウイルスの震源地であるコムは、屈指のシーア派聖地でシーア派教学の中心地。ここを中心にシーア派巡礼者や学生らを通じて中東各地に感染が広がったようだ。イランは選挙の円滑な実施を優先させるため、自国のみならず、イランからウイルスを持ち込まれたとみられる中東諸国への通知も意図的に遅らせた可能性が指摘されている。

もっとも、イランは、このような批判も「陰謀だ」「イランを貶めようとする欧米の計略だ」と反発している。聖地コムなどウイルスが蔓延しているホットスポットの封鎖といった、イタリアや中国で取られているような対策は十分に実施されていない。

学校の休校や、国民の移動自粛呼びかけでは不十分との指摘もあり、イランの危機は収束しそうにない。さらに国民の体制不信も強まっており、国内外でイランは厳しい立場に追い込まれそうだ。

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