「ダウン症の娘」を伝える授業で心に響く真実

福岡で元教諭の体験談が感動呼び700回以上に

福岡市の小学校で授業をする是松いづみさん。授業の90分間、みんな顔をあげて熱心に聞き、積極的に手をあげて発言していた(筆者撮影)
「ダウン症って知ってる?みんなの体の中にある染色体が突然変異で1本多くなったの。ほら、三つ葉のクローバーの中に四つ葉のクローバーがあるのと同じよ」「ダウン症にもいろんな人がいてね、私の娘の梓(あずさ)は筋力が弱いから長く歩けなかったり、文字の読み書きや意思疎通が難しいこともあるの」。優しく語りかける言葉に、小学生も保護者も引き込まれるように聞き入っていた。
「あずさからのメッセージ~子どもに学ぶ命の尊さ~」と題した授業が口コミで評判をよんでいる。福岡市の元小学校教諭・是松いづみさんは、38歳で出産した次女・梓さんがダウン症だった。4年前に59歳で早期退職し、今は大学で講師を務める傍ら、福岡県内の小学校をはじめ中学校やPTA、先生の研修などで梓さんのエピソードを伝え続けている。これまで引き受けた授業や講演は約700回にのぼる。是松さんに話を聞いた。

ダウン症の次女に家族はどう向き合ったのか

ーー梓さんのことを伝える授業を始めたきっかけは?

2002年、私が担任していた5年生に授業で話したところ、お子さんの話を聞いた保護者から「私たちも聞きたい」と言われて、保護者向けにお話しました。すると少しずつ他の小学校からも声がかかるようになり、17年間で700回近く出前授業や講演会をするようになりました。

ーー梓さんがダウン症とわかったとき、どんなお気持ちでしたか?

産後すぐ、心臓の音が弱いので検査を受けるようにと医師に告げられ、梓だけ救急車で総合病院に搬送されました。そして1週間後、梓の心臓には穴が開いていて、ダウン症であることを夫から聞きました。私と夫は大学のボランティアサークルでダウン症の子と接したことがあったので、少しは理解しているつもりでした。

でも、いざわが子となると動揺してしまい、私は仕事をしながら育てていけるかなと不安におしつぶされそうで……。ちょうどその頃、私は教師に向いていないかもと悩んでいたけど、「やっぱり教師の仕事が好き。続けたい」と気づくことができたのは梓のおかげです。だから気持ちを切り替え、ダウン症の梓を受け入れてくれる保育園を探しました。

ーー梓さんは次女なので、兄姉にどう伝えるか悩んだのでは?

梓が生後3か月の頃、お兄ちゃんは小3、お姉ちゃんが小1。4人でお風呂に入っているときに伝えました。「梓はみんなと違うところがあるから聞いてくれる? 梓はゆっくり成長していく子どもなんよ。だからひらがなを書けるのもいつになるか、わからん」と。

2歳の頃の梓さん(写真:是松いづみさん提供)

すると息子が「え、自分の名前くらいは書けるやろ」と言うから、「もしかしたら、ずっと書けんかもしれん」と答えました。息子はじっと梓の顔を見て、何と言ったと思います? 授業で子どもに発表してもらうと「何で?」「僕が教えてあげる」「ゆっくりできればいいよ」などと答えてくれます。

実際、息子はこう言いました。「お母さん、こんなにかわいっちゃもん。いてくれるだけでいい。何もできんでいい」。私は涙が止まらず、顔を洗って気づかれないようにするのが精いっぱいでした。

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