SARSの教訓活かす「香港」の新型肺炎の徹底対策 幼稚園や学校は3月中旬まで「休校」の措置

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香港政府は、2月8日からは中国全土に過去14日以内に滞在歴がある場合は、香港入境後14日間の強制検疫を実行する、と発表した。これは事実上の入境制限と言えるが、香港では「政府の対応は遅すぎた」と批判する声が多い。

「(強制検疫施行の直前である)2月6日、7日に多くの人が中国本土から香港に押し寄せた。もっと早く入境制限をすべきだった」(九龍の飲食店で働く30代香港人男性)

「政府の対応には不満だ。新型肺炎が終息しても、またこの対応不備を理由にデモが再開されると予想している」(香港島でコンサルタントとして働く20代香港人女性)

「日本のほうが危ないのでは?」

日本は、と言えば、2月12日に外務省が中国全土を対象に「日本への早期の一時帰国や中国への渡航延期を至急ご検討ください」と呼びかけるスポット情報を掲出。これをきっかけに、日系企業の駐在員家族は続々と一時帰国をしている。その一方で、日本側ではいまだ湖北省・浙江省を除く中国からの入国は制限していない(2月20日時点)。

「顔見知りの駐在員家族はみんな帰国していった。しかしむしろ日本のほうが危ないのではないかと心配だ」(10年以上医療通訳として働く40代女性)

香港ではストリートパフォーマーもマスクをして歌う(筆者撮影)

COVID-19はたとえ無症状でも、非常に感染力が強いことは周知の事実だ。東京マラソンの一般参加中止が発表される以前は、青梅マラソンや京都マラソンといった大規模イベントが日本各地で開催されていた。

2月上旬に日本を訪れたエヴァさん(20代香港人女性)は、仕事や旅行で、年に何度も日本を訪れる親日派だ。

香港では、マスクは「感染予防だけでなく、自覚症状がなく感染していた場合の拡大を防ぐために着用するもの」(同)という認識が一般的。

しかし「都内の電車の中では90%の人がマスクをしていなかったし、大きなイベントも中止にならなかった。日本は(重症化しやすいとされる)お年寄りの数も多いはず。香港だけでなく、シンガポールや台湾といったアジア諸国が厳戒態勢を敷いている中で正気とは思えない」。

「行ったのを後悔したのはこれが初めて。日本は安心で、安全な国だという見方が変わってしまった」と肩を落とした。

一方、日本国内でも、自衛を試みている企業もある。GMOインターネットグループは1月17日から渋谷・大阪・福岡の従業員を対象に在宅勤務を命令。同社会長兼社長の熊谷正寿氏は2月16日、自身のツイッターで「(在宅勤務による)業績への影響はほぼない」と明かした。

ヤフージャパンも、ラッシュを避けた時間差通勤を認めるとともに、100人以上が参加する会議やイベントの開催・参加を禁止。日本たばこ産業についても、上限週2日だったテレワークを無制限に変更した。

19日にはリクルートホールディングスが、海外拠点の約2万人の従業員を対象に「日本への」出張を禁止した。

「日本の大規模アパートメントでも、自主的にマスクを配布したり、ロビーに共用のアルコール消毒液を置いたりと、自衛する 管理組合が 増え始めている」(長嶋氏)

今や感染経路の不明な感染例が続出している日本では、水際対策は完全に失敗したといえる。残念ながら国が頼りにならない、となれば、企業や個人単位で自衛と感染拡大の予防に努めるしかないだろう。

富谷 瑠美 香港在住コラムニスト

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とみや るみ / Rumi Tomiya

2006年早稲田大学法学部卒。アクセンチュアで全国紙のITコンサルティングを担当したのち、日本経済新聞電子版記者、リクルートグループの編集者を経て、子連れで香港に移住。Twitterはこちら。

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