子供の競技人口減にダブルスポーツという秘策 スポーツの仲間でつながらないと未来はない

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教育現場はともかく、ビジネスの世界では、スポーツを、ジャンルを越えて総合的にとらえる動きが生まれている。

この1月、Jリーグの東京ヴェルディは、総合型スポーツクラブとして世界に通用する人材を創出するという方針を打ち出した。

発表会の様子(写真:東京ヴェルディ株式会社提供)

傘下には軟式野球の東京バンバータがある。さらにバレーボール、トライアスロンからeスポーツまで幅広い分野のスポーツ人材を育成している。

選手、指導者の交流は今の時点ではあまり多くないが、マネジメント部門ではすでにスポーツジャンルを越えた異動が行われている。

Jリーグでは、アルビレックス新潟も、野球独立リーグルートインBCリーグの新潟アルビレックスBCや、Bリーグの新潟アルビレックスBBなどとグループを組んでいる。

そもそもJリーグは「Jリーグ百年構想」で、「サッカーに限らず、あなたがやりたい競技を楽しめるスポーツクラブをつくること」を明確に打ち出している。こうした動きは特異なものではなく「Jリーグの理念」に沿ったものなのだ。

野球界では横浜DeNAベイスターズも、DeNAグループ全体で見れば「スポーツ事業」の一部門だ。この部門には、横浜DeNAランニングクラブやBリーグの川崎ブレイブサンダースもある。マネジメントのレベルでは当然、人事交流が行われている。

スポーツ庁は「スポーツの成長産業化に対する支援」として「スポーツを産業としても捉え、国民の消費が『モノ』から『コト』に移行している時代背景や、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会等、大規模国際大会の開催を機に、スポーツ関連消費・投資マインドの向上が予想されるこの機会を最大限に活用し、スポーツを成長産業化すべく様々な取組を行っていく」という方針を発表している。

個別のスポーツジャンルでとらえれば、競技人口はじり貧だが、スポーツ全体をビジネスマターとしてとらえれば大いに有望なのだ。「スポーツの成長産業化」を実現するためには、ジャンルを越えた連携による相乗的な成長が必要になるだろう。その過程で「ダブルスポーツ」は間違いなく課題に挙がってくるだろう。

縦割り組織が阻害要因に

組織論的には、スポーツ界の「縦割り」が、大きなネックになるはずだ。高校生レベルで言えば、インターハイを主催する公益財団法人全国高等学校体育連盟には、高校野球は加盟していない。公益財団法人日本高等学校野球連盟は別個の組織だ。両連盟は長い間没交渉だ。さらに女子野球のように高体連に入っていないスポーツジャンルもたくさんある。

こうした日本的な組織の在り方が、今後、スポーツ改革を進めるうえで「抵抗勢力」になるだろう。

ある地域で、高校野球の元指導者が、サッカー部の部活のグラウンドの横にグローブやボールを置いておき、練習上がりのサッカー部選手に「ちょっと遊んでいかないか」と声をかけたという。サッカー選手たちは、珍しそうにグラブを手にはめて、キャッチボールに興じたが、この話がその県の高野連の耳に入って、その元指導者は厳しく叱責されたという。

この話を聞く限りでは、ダブルスポーツなど程遠い話だとは思うが、野球だ、サッカーだと互いの縄張りを主張するような考え方は、成熟社会に入った日本ではもう時代遅れになろうとしているのだ。

間違いなく言えることは、ジャンルを越えて「スポーツをする仲間」が、つながることでしか、日本スポーツの未来はない、ということだ。

広尾 晃 ライター

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ひろお こう / Kou Hiroo

1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイースト・プレス)、『もし、あの野球選手がこうなっていたら~データで読み解くプロ野球「たられば」ワールド~』(オークラ出版)など。

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