こうした状況を打破し、多くのスポーツが共存共栄できる方法は、たった1つしかない。
それが「ダブルスポーツ」だ。
日本では、1つのスポーツを選択すれば、1年中そのスポーツに打ち込むのが当たり前になっているが、スポーツ発祥の地であるヨーロッパやアメリカでは、むしろ複数のスポーツを選択するほうが普通になっている。夏にサマースポーツ、冬のウィンタースポーツに取り組む「シーズンスポーツ」が基本だ。
とりわけアメリカではトップアスリートでもダブルスポーツが当たり前になっている。MLB(メジャーリーグ)で活躍する選手の中には、NFL(アメリカンフットボール)やNBA(バスケットボール)でもドラフト指名される選手がたくさんいる。そういう「二刀流」は珍しくない。
MLBとNFLでオールスターに出場したボー・ジャクソン、MLBとNBAでプレーしたダニー・エインジなどが代表的だ。NBAのスーパースターのマイケル・ジョーダンが最初の引退後に野球のマイナーリーガーになったのも記憶に新しい。
2018年には、オクラホマ大学のカイラー・マーレイが、MLBアスレチックスから1巡目で指名を受けたが入団せず、翌年、NFLアリゾナ・カージナルスから1巡目指名されて入団した。
そこまでいかなくても、アメリカ本国出身のアスリートで、アマチュア時代1つのスポーツしか経験していない選手のほうが少ないかもしれない。ドミニカ共和国やベネズエラなど、MLBへの人材供給源となっている国では、野球一筋の選手が大部分だが、アメリカ本土では「ダブルスポーツ」が一般的なのだ。
教育的な見地からも有効
「ダブルスポーツ」は、教育的な見地からも有効だとされる。
バラク・オバマ前大統領のミシェル・オバマ夫人は、マリア、サーシャの2人の娘に「2つのスポーツをやりなさい」と教えたという。
1つは「自分が好きなスポーツ」。もう1つは「母がやらせたいスポーツ」。好きなスポーツをすることで長所を伸ばすことができる。そして、母にやらされたスポーツは「強制されて始めたものごとを、いかに自分のものにするか。いかに成績を挙げるか、を考えるため」とのこと。こういう考え方が、アメリカでは定着していると考えてよさそうだ。
もし、日本でも「ダブルスポーツ」が普及すれば、スポーツの競技人口の減少に歯止めをかけることが可能になるだろう。
野球選手がオフにサッカーにも打ち込めば、競技人口的には「2」になる。相乗りすることで競技人口は双方ともに減らない。シェアを奪い合うのではなく、2つのスポーツで1人の選手をシェアするという発想だ。
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