サイバー藤田社長、プロレス買収「2度目」の賭け AbemaTVでスポーツ分野を続々強化

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今回のノアの買収には「救済」の意味もある。2000年に故・三沢光晴選手が中心となり、当時「全日本プロレス」に所属していた選手らで設立されたノアは、ここ数年、オーナーとなる会社が次々に変わった。

ノアの経営状況は「大変厳しかった」

2019年11月にそれまでのオーナーだったリデット・エンターテインメントから武田有弘社長が株式を買い取り、現在のノア・グローバルエンタテインメントの体制となった。具体的な業績は明らかでないが、武田氏は記者会見で「経営状況は大変厳しいものだった」と語った。

その直後に武田氏はDDTの高木社長に経営の問題点や、ノアの選手のDDTへの参戦、動画配信サービスなどについて相談を持ちかけ、DDTの親会社であるサイバーの藤田社長に話がつながったというわけだ。

ノア買収の発表記者会見には経営陣のほか、ノアの主力選手たちも登壇した。後列左から中嶋勝彦、杉浦貴、潮崎豪、小川良成、清宮海斗の各選手(撮影:尾形文繁)

2月1日から高木氏がノアの社長も兼務し、武田氏は執行役員となった。高木氏は、「私が担うのはノアの経営部分のみで、リング上にはタッチしない。サイバーエージェントグループ入りしてから培った経営ノウハウを生かしながら、会社を率いていきたい」と話した。営業や広報、経理、総務といった業務は2社で共通化していく方針だが、「団体としての統合は考えていない」(高木氏)という。

サイバーエージェントにとっては渡りに船だったかもしれない。開設以来、毎年200億円規模の赤字を出すほどの投資を続けながら、藤田社長はアベマTVを中核事業に育てようとしている。近年は格闘だけでなく、スポーツ分野の強化が目立つ。

サッカーJ2リーグのクラブチーム「FC町田ゼルビア」を買収し、スポーツ配信の「DAZN(ダゾーン)」との提携で試合を中継。そのほか、テニスの国際大会の放映権を獲得したり、競輪や競艇などの公営競技のチャンネルを開設するなど、スポーツコンテンツの充実に余念がない。プロレスは、投資に見合うリターンを得られるだけの人気を集められるか。藤田、高木両社長の手腕が問われる。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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