「弟子たちが成長し、独立に向かっていくときに、彼らに任せられるお店があってもいいかなと思ったんです。本店とは別の作り方でラーメンを作ることで、新たな勉強がみんなでできるという利点もありました」(飯田さん)
「ららぽーと沼津」への出店に当たっては、支店用のセントラルキッチンを設けた。店の裏を増築し、改装して作り上げたのだ。冷蔵庫、スチームコンベクション、製麺機のほか、沼津まで食材を運ぶための冷蔵車も購入し、8000万円の資金を投じた。
「飯田商店」のセントラルキッチンはいわゆる大手チェーンの工場のようなものではない。「店の厨房を広くした」というのが正しい表現だろうか。すべて手作りなのである。麺、スープ、チャーシューなどの具材にとどまらず、シューマイの皮まで手作りで、1個1個手で包んでいる。
工場長は朝1時から入って仕込みをしているという。こうして毎日1000食分を沼津まで運んでいる。
支店展開による福音
ららぽーとでは、セントラルキッチンで仕込んだものをラーメンとして仕上げる工程だけを行っている。こうすることでブレは限りなく少なく抑えられ、美味しい一杯が提供できる。
筆者は平日の11時に訪れたが、すでに40〜50人の行列ができていた。しかしフードコートは圧倒的な席数があるので、およそ30分の待ち時間でラーメンにありつくことができた。本店では整理券がないとなかなか食べられないのだから、この出店は貴重だと思った。
支店展開を始めたことでの福音もある。ブランド豚を一頭買いができるのだ。通常はチャーシューに使う部分、スープに使う部分など、必要な部位のみを仕入れるのが基本だが、一頭買いにより、ロース、バラなどは本店用のチャーシューとして使い、ウデやモモなどの一般的にはあまり使わない部位はららぽーとで提供するシューマイに使える。一頭買いにより、ブランド豚の高額なチャーシューの原価も下げられ、枚数をたくさん乗せられるようになる。
成功体験に拘泥して改革を怠ると、いずれ凋落してしまうケースはラーメン店に限らず、さまざまなビジネスで起こっていることだ。リスクもあるが新しい変化を起こさなければいずれは衰退しかねない。飯田商店が踏みこんだ2つの変革は、ビジネスの成功を維持することがいかに厳しいものかということを指し示しているようだ。
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