「らぁ麺 飯田商店」が大成功した味を変えた訳 かつては否定していた支店展開にも乗り出した

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「2年前ぐらいから味を変えた状態を想像するようになりました。豚と鶏からつくる、自分の中でいかにも“ラーメンらしい”と感じる一杯を作りたいという思いが強くなったんです」(飯田さん)

鶏清湯はブームがヒートアップしすぎて“第2のまたおま系”(「またお前か」の略)と言われるほどだった(“またおま系”は濃厚豚骨魚介つけ麺がブーム化したときにラーメンフリークの中で作られた言葉)。

鶏清湯は素材だけを見るとシンプルでまねしやすいため、しっかり作られたラーメンならまだしも、見た目だけを寄せたラーメンも増殖していった。新店ができると、レビューの中には「飯田商店インスパイア」と書かれることも増え、そういう書き込みを見るにつれ、飯田さんは複雑な気持ちだったという。

「鶏清湯と一くくりにして語られることへの気持ちもあったのですが、その前に、自分の作っているラーメンは自分だけで生み出したのか? という疑問に立ち返ったんです。もちろん本気で美味しいものを目指して作ってきたのですが、このラーメンも先輩のラーメンの模倣で生まれたものです。そこで、この機会に自分で1からラーメンを作ってみようと決心したんです」(飯田さん)

刷新後もTRYラーメン大賞を受賞

常連からは「なんで変えたんだ!」「前の味に戻してくれ」という声もあったが、リニューアル後の『TRYラーメン大賞』(2019年11月発売)でも「飯田商店」は大賞を受賞。文句なしにラーメンファンに認められる評価を得た。

以前の鶏清湯と2枚看板にすることもできたかもしれないが、新しいほうの味に絞り込んだのは飯田さんの覚悟を持った決断だ。すでにセブンプレミアムから発売されていた「飯田商店」のカップ麺の味も変更せざるをえなくなり、関係者には迷惑をかけたという。

リニューアル後の味も「TRYラーメン大賞」で大賞を受賞(写真:筆者撮影)

もう1つの大転換は支店展開だ。

「飯田商店」は9年間、湯河原の本店だけで営業を続けてきた。筆者が2018年1月に取材した時も「支店展開には興味がない」という発言をしていたが、飯田さんの心境には変化が生まれた。それは、「中華蕎麦 とみ田」の存在である。「とみ田」はTRYラーメン大賞で4連覇の後、殿堂入りとなったお店で、店主の富田治さんは飯田さんの大親友でもあり、ライバルでもある。

「とみ田」の松戸にある本店には店主の富田さんが立つが、少しずつ各地へ出店を進め、現在9店鋪を展開している。どこの支店の味もしっかり保ちながら多くの人に美味しい一杯を届けている。

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