深刻な「異常気象」対策で後手に回る日本の実態

オーストラリア大規模火災に見る地球の危機

山本名誉教授は、気候非常事態宣言のポイントを以下のように述べる。

「宣言の内容はエマージェンシーとモビライゼーションの2つに分けられる。エマージェンシーとは非常事態、緊急事態という意味で、現在の気候変動がそういう状況にあり、気候の崩壊のみならず、文明の崩壊まで懸念される。日本ではこの意識が足りない。もう1つのモビライゼーションとは動員、社会の総力を挙げての取り組みという意味だ。例えばレスター・ブラウンは2003年の著書『プランB』で、第2次世界大戦におけるアメリカの総動員並みの行動に言及している」

そうしたスケールで短期・集中的に対応しなければ、この問題を解決できないというのが欧米の認識だという。

日本では、いくつかの自治体が2050年までに正味でゼロカーボンの削減目標を公表したが、気候非常事態は宣言しておらず、市民からの盛り上がりに欠けていた。昨年の9月25日に長崎県壱岐市が初めて、また、10月4日に鎌倉市議会が2番目に宣言を出した。12月になって長野県北安曇郡白馬村、長野県、福岡県三潴郡大木町、鳥取県東伯郡北栄町、大阪府堺市など、相次いでいるが、その数はまだまだ少ない。

若者たちの環境や人権等への関心は高い

昨年末の12月27日には徳島で「エシカル甲子園2019~私たちが創る持続可能な社会~」(主催:徳島県教育委員会、徳島県、消費者庁)が開催された。エシカルとはエシカル消費(倫理的消費)の略であり、環境、人権、社会、動物等に配慮した消費を促す概念だ。高校生がエシカルな活動を競い、全国のブロックから勝ち抜いた高校生が競うということで、「エシカル甲子園」のネーミングとなった。

「エシカル甲子園2019」風景(筆者撮影)

全国から70校の参加申し込みがあり、ブロック代表に選ばれた12校が徳島に集まった。優勝したのは徳島商業高校だ。

同校は、カンボジアのヤシ砂糖農家の生産現場に屋根を設けるなどして衛生面を改善、増産に成功した事例や、適正価格で買い取った砂糖を使ったどら焼きなどを東京オリンピックの関連施設で販売する計画も明らかにした。

前出のエコプロ2019では多くの小学生や中高生を見かけた。また、エシカル甲子園での高校生の活動を見ても次世代を担う若者たちの環境や人権等への関心は高い。彼らがやがて学校を卒業し、社会に出るとき、企業の環境対応等の姿勢が就職先を選ぶ大きな要因になるだろう。消費者としても環境などに対する意識も高いだろう。とすれば、企業は雇用の確保においても、製品の販売においても持続可能性やエシカルを意識した経営が求められる。

問題は、危機が差し迫っており、中長期的な姿勢だけでなく、目の前の危機にどう立ち向かうかという短期的な対応も求められていることだ。にもかかわらず、環境破壊・気候変動に対する危機意識は薄い。山本名誉教授は早急な「気候動員」の必要性を訴えている。この地球を次世代に残すための時間的余裕はないのだ。

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