「暴れん坊サウジ」と「ギリギリイラン」の行く末

2020年、大荒れの中東情勢はどうなるか

イランでは国民による抗議デモが増えている。写真は政府がネットアクセスを制限したことにたいする抗議デモ(写真:ロイター/Nazanin Tabatabaee/WANA)

2020年の中東は、アメリカが経済的・軍事的な圧力を強めるイランとの緊張や、イランとサウジアラビアの対立、少数民族クルド人を抱えるトルコとシリア国内に居住するクルド人との軋轢が続きそうだ。

また、2020年は中東の民衆が経済失政や不正義に対して一斉に反旗を翻した民主化要求運動「アラブの春」が、北アフリカのチュニジアで始まってから節目の10年。イランなどでは、体制にとって国民が最大の不安定要素になる可能性がある。

イスラム体制そのものへの不満も

世界に連鎖した反政府デモは2019年も中東各地で続き、イラクやイラン、レバノン、エジプト、アルジェリアで激化したが、2020年に向けてSNSを通じた市民の連携が一段と強まる見込み。これに対し、イランでは2019年11月に発生した反政府デモで、ネットを遮断してSNSによる情報の拡散を阻止し、強引に封じ込めた。

デモは経済的な不満からイスラム体制そのものへの不満に転化する気配もある。大統領選が行われたアルジェリアや、首相が辞任したレバノンでも、単なる指導者の交代だけではデモはやまず、汚職追放や有力一族の支配など体制の抜本的な刷新を求める声が収まる様子はない。

2020年11月には、アメリカのドナルド・トランプ大統領が再選を目指す大統領選が行われる。アメリカ軍は、一部部隊を残して内戦で混乱したシリアから撤退するなど中東での影響力を低下させ、代わりにロシアや中国がプレゼンスを高めている。

それでも、トランプ大統領の一挙手一投足が中東情勢を左右することは間違いない。ニューヨークのシンクタンク、外交問題評議会は、2020年に勃発しかねない紛争として、北朝鮮とアメリカの軍事衝突と並んで、イランやアメリカの直接対決ないしはアメリカの同盟国とイランが絡んだ衝突を挙げている。

だが、筆者は、2020年の中東は、小競り合いを除いて、国家対国家の大規模な軍事衝突につながるような紛争は起きないと予想する。最大の理由はアメリカの大統領選だ。トランプ大統領は、有権者の投票行動を考え、アメリカ兵の人的な損失につながりかねないイランとの大規模な軍事衝突を選択する可能性は小さいだろう。

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