韓国・中国文学が2019年の日本を席巻したワケ 韓国文学に感じる「使命感と必然性」

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映画『82年生まれ、キム・ジヨン』

井口:『キム・ジヨン』は10月に韓国で映画が公開されました(キム・ドヨン監督、チョン・ユミ、コン・ユ出演)。

斎藤:キャッチコピーが「みんなが知っているが、誰も知らなかったあなたと私の物語」とあって、うまいんだよね。キャスティングもいいですよね。いまいちばん好感度の高い2人をきちんと当てて、2人ともバッシングされるとわかっているけど、乗ってきてくれているのが偉いと感じましたね。

井口:試写会のレビューも、いま1点と5点で割れているそうです。

斎藤:確かにこの本には、ケチをつけたくなるところがなくはないです。でも、その弱いところを大目に見られないぐらい、とてもたまったものがある人たちが存在するというのはわかります。そういうところは多々ありますけど、それを補って余りある効果があったということだと思います。

井口:コン・ユさんとチョン・ユミさんは『新感染』でも共演しているんですよね。

斎藤:そうです。その前にも『トガニ 幼き瞳の告発』という映画で共演しています。これは完全に社会問題にコミットした作品で、聴覚障害特別支援学校での児童性的虐待がテーマです。

もともと、孔枝泳(コン・ジヨン)という大変有名な女性作家が実際に起きた事件をもとに書いた小説(蓮池薫さんの訳で新潮社から刊行)を映画にしました。そこで戦う教師がコン・ユで、共に戦う地元の人権センターの幹事がチョン・ユミなんですよ。だから、韓国のファンとしては、この映画を一緒にやった人が『キム・ジヨン』のテーマに取り組むというのは、超期待していると思う。

今後の韓国文学はどうなるか

井口:今後の韓国文学は、どうなるでしょうね。

斎藤:多様化の一途をたどるということに……。

坂上:11月に出たパク・ミンギュさんの『短篇集ダブル サイドA』『サイドB』(共に斎藤真理子訳/筑摩書房)はどんな作品集ですか?

斎藤:2005年から2010年ぐらいまでの短篇集なんですね。2冊組です。作家はそのあともガンガンに書いていて、次は『トリプル』にすると言ってます(笑)。ちょっと情けない男みたいなのがいっぱい出てきて、面白いと思います。

あとは、CUONが「CUON韓国文学の名作」という、ちょっと古い文学のシリーズを刊行されたので、これが今後続いていくと思うので楽しみです。書肆侃侃房さんでも「韓国文学の源流」というシリーズが始まっています。

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