韓国・中国文学が2019年の日本を席巻したワケ 韓国文学に感じる「使命感と必然性」

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写真左より坂上陽子さん、斎藤真理子さん、井口かおりさん(写真:編集部撮影)
2019年、出版界に巻き起こった“韓国文学ブーム”。出版不況と言われる中、韓国文学のヒット作を手がけた編集者たちはそのとき何を思い、このヒットをどう見ているのか?
ブームの火付け役となった『82年生まれ、キム・ジヨン』を刊行した筑摩書房の編集者・井口かおりさんと、「韓国・フェミニズム・日本」特集号が3刷となり、その完全版を単行本として刊行したばかりの河出書房新社の『文藝』編集長・坂上陽子さん、そして韓国文学の翻訳者であり2冊のキーパーソンである斎藤真理子さんに話してもらった(全3回)。
第3回は、両作のヒットの出版界における意味と、韓国文学の動向ついて。

両作のヒットの出版界における意味

坂上陽子(以下、坂上)『完全版 韓国・フェミニズム・日本』に収録された斎藤さんと鴻巣友季子さんの対談で鴻巣さんがおっしゃっていたように、日本文学で達成されていないことを、翻訳文学が補うというところはあると思います。日本の作家も今、新しい韓国文学を読み始めているので、それに影響を受けて、さらにまた日本の文学も今後変わっていくのではないかと。

斎藤真理子(以下、斎藤):そうですね。でも私が見るところ、多少偏りがあるんじゃないかな。女性の作家は広い年齢層で読んでくださっていると思いますが、男性は年齢層ではっきり区切られるような気がするんです。

おそらく60歳とか65歳以上の男性作家の皆さんは、中国文学は読むけど、韓国文学は読まない人が多いと思う。その1つの理由として、いま、若い女性の作品ばかりが訳されて前面に出ているから。たぶん関心がないというか、どんなに話題になっていても関心がなければ目に入らないですもんね。海外文学の畑では、女性男性問わず韓国文学に注目している方が多いですが。

坂上:ただこの間、語学の先生をしている人に会ったら、K-POPとか映画の影響もあるけれど、『82年生まれ、キム・ジヨン』(以下、『キム・ジヨン』)はじめ韓国文学がヒットしたことで、韓国語を学びたいという人や、韓国語を自分で翻訳したいという人もすごく増えていると聞きました。翻訳できる人が増えていくのは、今後の文化の発展というか、韓国文学を紹介する多様性において重要で、果たした役割はすごく大きいと思いますね。

井口かおり(以下、井口):韓国文学翻訳院の尽力もありますよね。作家との間をつないでくれたり、助成金を設定していたり。

斎藤:韓国はもともと自分たちの文化を海外に紹介したいという意欲が非常に強いですね。昔から外国人が韓国語を学ぶ機関が各大学にありましたし。私たちも、1980年代、1990年代に韓国へ行ったときに、ほんのちょっとしか話せないのに「わが国の言葉を学んでくれてありがとう」と言われました。茨木のり子さんも書いているけど。

井口:金大中大統領の時代に、海外への文化政策にお金を使うようになったと翻訳院の方が言っていましたね。

斎藤:金大中政権ってIMF危機の真っただ中で政権交代しているんですよね。韓国の歴史のうえではその時代が、グローバル戦略に乗らないことには生き残れない、という大きな分岐点だったと思います。

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