韓国・中国文学が2019年の日本を席巻したワケ 韓国文学に感じる「使命感と必然性」

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井口:あとはやはり、斎藤さんたち翻訳者の方々の功績がとても大きいですよね。シリーズで出し続けてきた版元の力も大きいけど、韓国文学は訳者に恵まれていると思います。

坂上:やっぱり、誰かいい紹介者がいないと、いくらいい小説が出ていてもなかなか広めることは厳しいんです。それこそ、村上春樹さんや柴田元幸さんが新しい潮流のアメリカ文学を紹介してブームになったように、出版社が「これが海外ではやっていますよ」といくら言っても届かないという印象がありますね。

 韓国・中国文学が席巻した2019年海外文学

坂上:今年の海外文学の話題は、韓国文学と、中国小説の『三体』が大きかったですよね。

今年ヒットした『三体』(劉 慈欣 著、 立原 透耶 監修、大森 望 、光吉 さくら、ワン チャイ   訳/早川書房)

井口:『文藝』は1月に出る2020年春季号が「中国・SF・革命」特集ですものね。

坂上:はやっているものは全部のっかるという節操のなさが……(笑)。SFファンの上限が2万人ぐらいいると聞いたことがありますが、『三体』はそれを軽々超えて売れていますね。いま中国がビジネス的にも注目されているから、ビジネスマンが結構読んでいると聞いています。うちで言うと、『サピエンス全史』の読者層に近いそうです。フィクションに何かを求めたいけど、何を読んでよいかわからない、いまはやっているからまずはこれ。みたいな。

今年『プラータナー』というタイの作家の小説を刊行しましたが、いまタイ文学も面白くて、いわゆる欧米の文学との距離ではない、農耕民族としての近さが感じられるような、懐かしい感じがあります。

なので東アジア文学は今面白い感じになってきていて、いま世界の流れとしても欧米文学偏重だったと思われはじめてきていることもあり、今後そういった文学の紹介はさらに進んでいくと思います。

斎藤:いいですね。来年が楽しみです。

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